事務職は今でも人気の職種ですが、求人数はそれほど多くありません。
厚生労働省の調査「職業別一般職業紹介状況(実数・パート含む)」によれば、2019年4月の一般事務(いわゆる事務職)の新規求人倍率は、0.48。求職者10人に対して、求人が4.8件しかない状況です。直近5年ほどで見ても、0.4~0.7と低い水準で推移しています。
そんな中、事務職の志望者にとって狙い目なのが「工場事務」です。
工場事務(生産関連事務)の2019年4月の新規求人倍率は、2.75。つまり求職者10人に対して、27.5件の求人があります。いわゆる売り手市場です。特に近年は求人倍率が右肩上がりで、2.5~3.5と高い水準をキープしています。
仕事内容は基本的に一般事務と同じです。ただ工場勤務ならではの特徴があり、それによって楽しさや大変さ、向いている人・向いていない人が変わってきます。
工場事務の仕事内容について
工場事務の仕事内容は業界や企業によってさまざまですが、大きくは、
に分けられます。
それぞれの具体的な内容は、主に以下のとおりです。
工場事務の業務について
1)データ入力
売上や経費のエクセル入力、など。
2)請求書など(伝票)の作成・管理
受注した製品の請求書を作成して顧客に送付、など。
3)電話・来客対応
工場見学を実施している場合、見学者の案内を工場事務が担当するところも。
4)備品管理
工場内の備品の管理や発注、など。
5)その他
工場職員のお弁当の発注、事務室の掃除、など。
一般的に工場事務というと、こちらを指します。一般事務と同じ業務内容を工場で行う仕事です。未経験から応募できる求人は、これらの仕事を任せる想定です。
生産管理事務の業務について
1)資材調達
材料の仕入れ全般を担当。発注先を決めたり、届いた材料の種類や個数に間違いがないかチェックしたり。
2)工場経理
工場の経理業務全般。
3)工程管理(生産管理)
納期に間に合うよう生産が進んでいるか管理する、受注状況に合わせて在庫の量をコントロールする、など。
これらの業務は「生産管理事務」と呼ばれます。いずれも専門性が高く、資材調達・工場経理・工程管理ごとに専任の担当者を置くのが一般的です。
未経験で応募できる生産管理事務の求人もありますが、経験者募集が多いです。
なお、両者の業務をまとめて「工場事務」と呼んでいる企業もあります。そのため必ず求人内容を見て、自分の希望する仕事か確認してから応募しましょう。
(本記事では、両者をまとめて「工場事務」としています)
派遣社員の場合は、工場事務に専念するのが一般的です。正社員の場合は、工場事務から生産管理事務へステップアップする機会もあります。
工場事務の楽しいところ・大変なところ
工場事務には、どんな楽しさや大変さがあるのでしょうか。
少ないですが、いくつかクチコミをご紹介します。
工場事務の楽しいところ・やりがい
1)20代女性・派遣社員・食品工場
始業も早いけど終業も早く、アフター5が充実できるので楽しいです。
土日も休みだから、プライベートと仕事を両立したい人には、ピッタリの仕事です。
2)30代女性・正社員・化粧品工場
間接的にですが会社の商品製造に関わるので、お店に商品が並んでるのを見るとやっぱり嬉しいです。
3)30代男性・正社員・食品工場
資材調達に移ってから、商品の製造にダイレクトに携わっているので、ものづくりしているという実感があります。一般事務にはない、工場事務ならではの楽しさですね。
企業にもよりますが、工場事務は残業が少なめです。そのためプライベートと仕事を両立できるのが良いという声が多く聞かれました。工場の繁忙期を除けば、正社員でも10時間程度と少なく、派遣社員はほぼないようです。
また、ものづくりの現場に携われるのが楽しいという意見もありました。仕事の成果が商品という形になって見えるので、やりがいを感じやすいのでしょう。ステップアップして生産管理事務の仕事に移ると、その気持ちがより強くなるようです。
工場事務の大変なところ・難しいところ
1)30代女性・派遣社員・食品工場
- 工場事務の仕事は楽しいけど、工場が僻地にあるから通勤がちょっとつらい。
2)20代女性・正社員・精密部品工場
- みんな良い人たちだけど、平均年齢が高くて同じ世代が少ないのは寂しい。
- 服装は自由だけど、現場はみんな作業服だから、おしゃれしていくのが気まずい。いつも無難な格好にすっぴん。
3)30代女性・正社員・自動車部品工場
- 電話番が自分しかいないので、クレームや無理な注文など、矢面に真っ先に立たされるのは、工場事務のつらいところかもしれません。そんなに多くはないですけど。
工場はだいたい僻地にあるため、最寄り駅から徒歩30~60分などが当たり前。専用バスを走らせたり、マイカー通勤を認めたり配慮している工場も多いですが、やはり時間がかかります。
また、工場の職人は電話に出ません。そのため電話対応は、工場事務の人が一手に引き受けます。クレームなども当然、最初に受けなければいけません。
ただ、営業などへ直接クライアントから連絡がいくほうが多いので、事務所にクレームが入ることはあまりないそうです。
おすすめ工場系求人サイト
工場求人ナビ
- 求人数が少ないが、求人の品質の定評があります(2019オリコンランキング1位)
- 優良企業が多い(ブラック企業に当たりにくい)です
- 面接来場(合否不問)でQUOカード1,000円分がプレゼントされます
- 検索メニューはメリットで絞るだけと、シンプルで使いやすいです
- 「残業少なめ」で検索できます(できないサイトが多いです)
お仕事情報ネット
- およそ10,000件と業界最多規模の掲載求人数
- 正社員求人、正社員登用求人が多めです
- 高時給、高月給の求人が多めです
- 工場事務の特集ページ、寮あり求人のみの特集ページなどがあります
工場事務の給与・服装・残業・雇用形態など待遇について
それでは次に、工場事務の待遇面を具体的に見てみましょう。
給料について
工場事務の給料は、そこまで高くありません。都市部の相場としては、
- 派遣社員:1,200~1,400円
- 正社員:20~23万
未経験だと、このくらいです(大手メーカーの工場だと、もう少し高めです)
地方の工場では、
くらいです。
ただ、近年は人手が不足しているため、いずれも上昇傾向です。今後もこの傾向がしばらく続くと見られています。
服装について
工場事務の服装は企業によります。制服、作業服、自由、いろいろです。基本的にはラフな格好で問題ない工場が多いですが、事前に確認しておきましょう。
雇用形態について
工場事務は派遣社員としてのニーズが多く、アルバイトや正社員の募集は少ないです(生産管理事務は正社員や契約社員が多いです)
ただ、最近は担い手不足の影響から、正社員登用制度を設けて長期的な雇用を確保しようという動きが多くの工場で見られます。
勤務時間・残業について
工場事務の朝は早く、始業は8:00~8:30ごろ、終業は17:00~17:30ごろが一般的です。地方だと7:30など、さらに早い工場もあります。
残業は、大型受注が突発で入ったり繁忙期だったりする以外は、正社員も派遣社員も少ないです。プライベートと両立したい人が多い職種としても知られます。
福利厚生について
一般の会社に用意されている社会保険・労働保険や有給休暇などはもちろん、
- 寮完備(家賃だけでなく光熱費まで会社負担のところも)
- マイカー通勤OK
- 正社員登用制度あり
など、かなり手厚いのが特徴です。人手不足解消のために、どこの工場も働きやすい環境づくりに力を入れています。
また東京など都市部の人が地方の工場事務に応募した場合、人事がわざわざ東京まで出てきて面接してくれることが多いです。
工場事務に向いている人・向いていない人
最後にここまでの内容を踏まえて、工場事務に向いている人・向いていない人についてまとめてみましょう。
工場事務に向いている人
次のような方は、工場事務に向いているといえます。
1)プライベートと仕事を両立したい人
工場事務は残業が少ないため、プライベートも充実できます。
2)誰とでも話せる人
工場は若手から年配の人まで年齢層が幅広く、外国出身の人がいる所もあります。
また、髪の色やピアスも自由な所が多いです。
そのため、誰とでも分け隔てなく接することができる人に向いています。
3)体を動かすのが苦にならない人
仕事は主にデスクワークが中心ですが、一般事務より体を動かす機会が多いです。
ちなみに工場の朝は、全員集まってのラジオ体操で始まるのが一般的です。
4)几帳面な人
工場は安全第一。事前にリスクを回避するには、細かいチェックなどが必要不可欠です。普段の仕事を丁寧にこなすのはもちろん、工場内に物が落ちていないかなど、周りに配慮できる人が向いています。
5)トラブルにも慌てない人
時に設備トラブルや事故が発生してしまうこともあります。そうした時に冷静に対応できるかどうかも、工場事務には大切です。
6)ものづくりの現場に携わりたい人
自分にスキルはないけど、ものづくりに携わりたい人に工場事務は向いています。やがて資材調達などに移れれば、よりダイレクトに製造に関われます。
工場事務に向いていない人
一方、次のような人は、工場事務に向いていない可能性があります。
1)朝が弱い人
どの工場も出社は7~8時台と早めです。
2)長時間の通勤が苦手な人
住んでいる場所にもよりますが、工場はだいたい僻地にあるため通勤時間もかかります。
3)若い人が多い会社で働きたい人
工場の平均年齢は、だいたい30代半ばくらいと高めです。
4)女性の多い職場で働きたい人
工場は男性が多いです。その影響で、お手洗いが男女共用のところもあります。
工場事務志望で少しでも女性の多い工場で働きたい場合、食品工場や精密部品工場、化粧品工場などを選びましょう。
5)おしゃれしたい人
服装は自由な企業が多いですが、周りが作業服のため、遠慮してシンプルな格好にすっぴんという人が多いようです。
6)稼ぎたい人
給料は他の仕事より少し落ちます。
ちなみに、工場事務に応募する際、特別な知識や資格は必要ありません。パソコンの基本的なスキル(Microsoft Office。特にExcel)があれば大丈夫です。
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工場事務は、勤務地が僻地、始業時間が早いなど独特な就業スタイルのため、向いている人・向いていない人が分かれます。
またこちらで紹介したのはあくまで一般的な特徴で、工場によっても変わってきます。面接で社員と会ったとき、仕事内容や工場内の雰囲気について、きちんと確認しておきましょう。