工場転職ガイド 工場勤務の実態、溶接やフォークリフトなどの資格やピッキング作業など工場勤務全体を紹介
製造業の金属加工では、NC旋盤によって工場の生産ラインがフル稼働しています。NC旋盤はさまざまな工場で活躍しており、多くの製品を加工しています。オートプログラムなのでオペレーターの操作も簡単にできるのが特徴です。
工場未経験の人や製造業勤務でも現場の生産ラインに入ったことのない人のために、NC旋盤の仕事内容、やりがい、向いている人の特徴を解説していきます。
NC旋盤とは、旋盤加工を自動化で組み込んだ設備を指しています。旋盤加工とは回転する加工物（ワーク）に対して、刃物（バイト）を一定の距離で当てることで加工していきます。
ワークの外径や内径、ネジ、溝、穴などの加工が可能です。さまざまな形状に加工できるのが旋盤の特徴ともいえますので、非常に多くの工場で取り入れられています。そもそも、金属や樹脂は元々の形から製品化にするために形を成形しないといけません。
そこで旋盤を活用して少しずつ形状を変えていくのですが、これをプログラムで自動化したのがNC旋盤となります。
NCは「Numerically Control」の略でコンピュータによる数値制御を意味しています。NC旋盤といえば、元々工場内にあった旋盤機にNC制御を取り付けたタイプと、最初からNCプログラムを取り込んだNC旋盤機があります。
NCは旋盤加工だけで用いられているのではありません。たとえば、研削加工の芯なし研削盤（センタレス）では、ワークの形状を成形するドレッサーにテンプレートを取り付けてドレッシングします。研削砥石にテンプレートの形状が転写されますが、これをNCで制御することで、サーボモーターがプログラムされた精細な動きでドレッシングし、より綿密な形状を維持することが可能となります。
製造業に勤務している人ならサーボモーターを一度は耳にしたこともあるでしょう。モーター（モータ）は電力エネルギーを動力に変換して回転させるもので、日常生活においてもさまざまな面で使われています。現場の生産ラインで働いている人や生産技術・設計などはサーボモーターのことを「サーボ」と呼び、当たり前なのですが搬送部のコンベアを動かしているモーターとは分けて扱っています。
サーボとはあまりいい意味合いではありませんが、ラテン語で「奴隷」や「召使」のように「主人に対して忠実な」という由来があります。いわゆる「オペレーターに忠実な動きをするモーター」と捉えればいいでしょう。サーボモーターはプログラムで作成された命令通りに動くことができますので、X・Y・Zといった空間の座標だけでなく、速度も管理可能です。
たとえば、鉛筆のように先端を尖らしたワークを加工したい場合を仮定します。前工程のワークの径寸法を測定し、尖った先端からの角度や長さ、全体の径寸法、送り速度をどのくらいにするのか、ということを段取り者が操作盤に数値を入力するだけで加工できます。
機械や材質によって入力値や操作はことなりますが、大まかには指示通りの動作をしてくれるのがNC旋盤といえます。そのため、NC旋盤にはサーボモーターが必要不可欠な存在といえるでしょう。
NC旋盤のメリットとして自動化による大量生産が可能な点が挙げられます。先述したサーボモーターの動きを手動で行うとなると結構大変です。一つのサイクルタイムに時間がかかりますし、オペレーターが設備に貼り付けとなります。
これを自動化することでオペレーターの負担が減りますし、空いた時間で他の設備も担当できますから工場的にも生産性が高まるものです。
バイトの切り込みを1μm（0.001mm）まで精細な動きが可能となり、高品質な製品を量産できる強みがあります。同じ品質のものを大量生産できるのは自社の工場だけでなく、納品先の顧客にとっても安心感が違います。
先述の説明だと何だか難しいと感じる人も少なくありません。確かにプログラムやサーボ、角度という言葉は通常では聞き慣れないものですが、それだけで自分に無理という決めつけは早すぎます。
実際に工場の生産ラインで働いているオペレーターのほとんどは、NC旋盤のプログラムに触れることはありません。プログラム自体は設備納入時やオーバーホール時に組み込まれており、工場内でのトラブル対応でプログラムを更新する場合にも生産技術のスタッフが対応するものです。
また、段取り時には製品ごとに座標の数値やマクロ変数を入力しなければなりませんが、これも段取り者が行いますし、特別難しいものではありません。簡単な例ではバイトのスタート地点の絶対軸X座標とY座標、切り込み量、移動量、往復回数を入力するだけです。
工場の規模によってことなるでしょうが、基本的に段取り者でもプログラムは触らないといえますので心配いりません。
オペレーターは段取り完了したNC旋盤にワークをセットし、サイクルスタートのボタンを押すのみです。加工が完了したら寸法や精度の測定をして合格なら次のワークを加工していきます。面倒な作業はすべて自動で完了しますから、オペレーターにも負担はかかりません。
何かすることといっても、ワークのセットと測定、切粉の掃除くらいとなります。むしろ一番大事なのは品質測定です。次工程に送る製品が不良品とならないようにしっかりチェックするようにしましょう。いくら高品質を保てるNC旋盤とはいえ、100%の状態が続くわけではありません。
バイトの先端にあるチップが摩耗すると寸法や精度にも影響がでます。チップの交換は時間や本数で決められている部署もあれば、寸法誤差が生じて段取り者がチェックする場合もあります。オペレーターがチップ交換する場合もありますので、刃物ですから指を切らないように慎重に扱いましょう。
おすすめ工場系求人サイト
工場求人ナビ
お仕事情報ネット
NC旋盤は製造業の中でもモノづくりの基礎ともいえる仕事です。工場で生産されている製品は同じものを加工しています。ただ、NC旋盤はプログラムで動くので自由度が高く、さまざまな形状の製品を作り上げます。生産だけでなく製品の修理にも対応し、量産品以外にも単発で仕事を請ける場合もあります。
オペレーターはそれほど難しいことはやらないので、安定した良品質の製品を加工し続けるのは気持ち的にも楽しいですし、慣れてくれば段取りに挑戦してNC旋盤の仕組みを覚えていくのはやりがいにつながります。
NC旋盤は複雑な動きも自動加工してくれますが、その分一つのワークを加工するサイクルタイムが長い場合があります。そうなると、複数台を見ていても時間の経過が遅く感じられます。集中力の続く人や立ち仕事に自信のある人は向いています。
また、NC旋盤が活躍する部署によっては、難しい加工の場合のみに限定していることもあります。外径だけ研削したい場合は、NC旋盤よりも大型の研削加工機でスルーフィード研削したほうが大量生産でも圧倒的に速く完了します。それだけにNC旋盤で加工される製品は品質チェックが重要ですので、寸法公差のバラつきや円筒度、真円度、平均粗さといった各精度のチェックを慎重に作業しなければなりません。
NC旋盤には慎重な性格の人にも向いています。
NC旋盤で働く人の給与も気になるところです。厚労省の職業情報提供サイトによると、令和3年度におけるNC工作機械オペレーターの平均年収は439.5万円となっています（令和3年賃金構造基本統計調査）。同調査では平均年齢が41.6歳となっており、キャリアを積めばより高い年収を目指すことも可能です。
日勤だけの仕事もあり、女性のオペレーターも増えています。交替勤務のある職場では夜勤で稼ぐこともできます。勤務先も大手企業から町工場の中小企業まで幅広く、多くの工場でNC旋盤が使われています。
需要も多くて入社時には特別な資格も必要ありません。どちらかというと、機械を触って覚えていくイメージになります。他の工場で研削・研磨加工に従事していた人や、フライス盤の操作ができる人は即戦力として段取り作業もすぐに覚えられるでしょう。
※厚労省 職業情報提供サイト
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/256
NC旋盤とは旋盤加工をプログラム制御で自動加工をしています。NC旋盤の優れている点は複雑な加工方法もプログラムを組み込むことで可能とし、切り込み量や速度、移動量を管理できることです。
また、NC旋盤の段取りや生産自体はそれほど難しいものではなく、オペレーターの負担も減ることから大量生産や複数台を担当する省人化にも役立っています。NC旋盤はモノづくりの基盤ですので、仕事を覚えていく楽しさややりがいも当然あります。
NC旋盤は集中力が続く人や、品質チェックを確実に行える慎重さを持った人には向いているでしょう。
