期間工とは、働く期間が決まっている工場作業員です。主に自動車メーカーをはじめ、各種製造メーカーで募集されています。
雇用形態は契約社員が一般的です。中には「派遣工」と呼ばれる、派遣社員の期間工の募集もありますが、多くはありません。以下、契約社員の期間工の前提で話を進めます。
期間工の働き方や待遇の特徴
期間工には、次のような特徴があります。
- 他の工場関連職より待遇が良い
- 給与が高い
- 正社員登用の可能性が高まる
- 働く工場は選べない
- 契約満了後に契約継続の打診がある
他の工場関連職より待遇が良い
期間工は大手自動車メーカー・製造メーカーの契約社員となるため、給料や福利厚生が普通の工場作業員よりも恵まれています。
たとえば、一般的な工場の非正規社員には支給されない「満了慰労金」という制度があります。名前のとおり、契約が満了した際に支払われるボーナスのような報酬で、相場は1,000〜2,000円×勤務日数くらいです。6ヵ月(120日)勤務の契約で日額1,000円とした場合、12万円が給料とは別に支給されます。ちなみに、2020年の冬にSUBARUが募集した期間工は、35ヵ月(約3年)満了で122万とありました。
他にも皆勤手当などで、非正規社員と比べて優遇されているケースが多いです。また寮や食事がすべて用意されていて出費が抑えられるというのも、大きなメリットです。
給与が高い
ベースの給料自体も一般的な工場作業員より高めで、大手自動車メーカーで日給1万円ほどです(未経験)。そこへ時間外手当や時差勤務手当などが乗って、だいたい月給28〜30万くらいになります(月20日勤務の場合)。
経験者の場合、そこへ経験者手当が乗る求人もあります。金額は契約期間によって異なる場合が多く、先のSUBARUの求人では、6〜11ヵ月満了で5万円、12~23ヵ月満了で10万円、24~35ヵ月満了で15万円とあります。
時給だけ見ると、派遣社員の工員のほうが高い場合が多いですが、期間工のほうが上にあるように手当が充実しているので、最終的な手取りは期間工が上回ります。
正社員登用の可能性が高まる
期間工からの正社員登用は、わりと多いです。一方、派遣社員からの登用は、事務職などでは一般的ですが、現場の工員となるとハードルが少し上がります。
期間工からの正社員登用は、基本的に上司の推薦に依ります。登用試験を実施している会社もあります。中には「勤務後にロッカー開けたら、正社員の雇用契約書が入ってた」という、ちょっと乱暴な話も少なくありません。
また期間工の正社員登用は、年齢があまり関係ないというメリットがあります。一般的な民間企業だと40代以降の登用は滅多に聞きませんが、期間工なら50代で登用されたという話もたまに出てきます(もちろん全体的には若手からの登用のほうが多いです)
未経験でも採用され、やる気や仕事ぶりが評価されれば、そのまま大手メーカーの正社員になれるというのは、大きな魅力と言えます。
働く工場は選べない
期間工募集は通常、全国の工場を対象に実施されます。「ここの工場で募集しています」といったピンポイントの採用活動はしません。そのため、応募の時点ではどこで働くことになるかわからないのが普通です。
また採用された後、配属の希望は出せないケースが多いです(だから寮が完備されています)。よって、自宅から遥か遠方の工場へ配属される可能性もあります。
契約満了後に契約継続の打診がある
もともと期間に定めのある期間工ですが、満了後に継続契約を打診される会社も少なくありません。もちろん、そのまま一生その会社で期間工というわけにはいきませんが、ある程度の期間、その会社で働ける可能性はあります。
期間工と派遣工の違い
2004年の改正労働者派遣法によって、派遣社員が工場で働けるようになると、期間工ではなく派遣工でラインを回す会社も増えてきました。
どちらも同じ仕事に取り組む期間工と派遣工に、実務上の大きな違いはありません。待遇面では、先に挙げた内容が派遣工にないというデメリットがあるぶん、期間工のほうが恵まれています(会社によります)
一方、期間工は会社との直接契約なのに対して、派遣工は派遣会社と契約を結び、就業先へ派遣されます。そのため就業先での仕事が終わった後も、派遣会社との契約が残ります。
つまり派遣社員の場合、仕事が終わっても失業はしません。次の仕事を紹介されるまでは休業手当が出ます。これは労働基準法で定められています。
第二十六条 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。
(e-Gov「労働基準法」より)
期間工の場合、契約満了後は無職です。次の仕事を自分で探さなければなりません。当然、見つかるまで収入を絶たれるので、家系は赤字です。
ただし、休業手当も上記のとおり、給与の満額が支給されるわけでないので注意してください。また支給は会社都合の理由による休業だけです。「今の派遣先の仕事きついです」といった理由で仕事を離れて待機となった、つまり自己都合で待機となった場合は、支給されない可能性が高いので気をつけましょう。
失業保険に関する補足
ここまでを見ると、雇用契約面では派遣工のほうがメリットが大きそうですが、失業保険については話が変わってきます。
失業保険は名前のとおり、失業した人に支給されるお金です。申請すれば、次の仕事が見つかるまで、一定額の給付を受けられます。金額の計算は複雑なので割愛しますが、年齢や離職前の平均月給、雇用保険の加入期間などをベースに算出されます。気になる方は、厚生労働省のページなどをご覧ください。
ただし、失業保険は直近の仕事の辞め方によって、もらえるタイミングが変わります。
失業保険がもらえるタイミングは、退職が会社都合か自己都合化によって変わります。具体的には、以下の通りです。
- 会社都合:申請から1週間後の待機期間を経て失業が認定され、その後、順次に支給される
- 自己都合:申請から1週間後の待機期間を経て、さらに2ヵ月の給付制限期間を経て、その後、順次に支給される
このように、自己都合の場合は2ヵ月以上も先の話になります。ちなみに、従来は3ヵ月でしたが、2020年に2ヵ月に短縮されました(厚生労働省のプレスリリース)。ただし、重大な責を伴う自己都合退職、たとえば社内規定に違反して解雇などの場合は、従来通り3ヵ月の給付制限期間が課せられます。
このように、どちらにも一長一短があります。自分はどちらのスタイルが合っているのか、慎重に選びましょう。
なお、ほとんどの会社の期間工は社会保険に加入しますが、中には雇用契約書に社会保険に関する記載がない場合もあります。その際は事前に人事に確認しておきましょう。
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PEOという新しい期間工の形
最近、PEOという雇用の新しい考え方が登場して、少し注目されています。
PEOとはProfessional Employer Organizationの略で、日本語に訳すと「習熟作業者派遣組織」となります。便利なアウトソーシング(業務委託)サービスとして、アメリカなどでは1980年代から活用されています。
これは、簡単にいえば、一人の従業員を複数の会社が共同で雇用する、労働力をシェアするようなビジネスです。
たとえば、PEOサービスを提供するA社と、経理のアルバイト人員を対象にPEOサービスを利用したい中小企業のB社があるとします。このとき、B社の経理アルバイトは全員、B社を退職して、A社の社員となります。ですが、引き続きA社で働き続けます。つまり、仕事内容はまったく変わらず、ただ所属する会社だけが変わります。
ちなみに、アメリカでは、このアルバイトの人たちはA社とB社の「社員」となりますが、日本では複数社が一人の従業員の雇用主となることは法律で禁止されています。そのため、アルバイトたちはA社の「社員」となり、B社へは「派遣される」という形を取ります。
PEOが従来の人材派遣やアウトソーシングと違うのは、A社がスケールメリットを活かせる点です。
B社は中小企業のため資金的に余裕がなく、福利厚生に力を入れるのは難しいです。しかし、PEOサービスを利用すれば、社員は全員、A社の社員となります。A社が同じように複数社の社員を自社の所属とすれば、それだけA社の社員数は増えます。
社員数が増えれば、たとえば保険商品や福利厚生サービスを購入するとき、割引制度などを受けやすくなります。つまりA社の福利厚生が充実し、そこの社員である元B社の社員たちは、B社で働きながら、A社の福利厚生を利用することができるわけです。
このPEOが近年、期間工にも応用されています。たとえば、株式会社PEOが運営するWebサイトでは、全国の製造業のPEO案件を閲覧できます。
(株式会社PEOのWebサイトより)
PEO企業で派遣工として働く場合、通常の派遣会社より働きやすい環境が整っている可能性もあるので、調べているのもいいかもしれません(ちなみに、株式会社PEOのGoogleマイビジネスを見ると、かなり辛辣な評価が集まっているので要注意です)