工場で金型設計の仕事に転職を希望している人もいることでしょう。金型はどのような部品を作る際にも必要であり、需要がなくなることは恐らくないだろうとも考えられます。製造業の要ともいうべき金型設計はどんな仕事内容なのか、やりがいや向いている人の特徴などをここで紹介していきます。
金型設計とは
金型設計とは製造業の要でもあり、工場で大量生産する際に使われる金属製の金型を設計する仕事です。工場ではさまざまな部品を生産しています。金型に金属やゴム、プラスチックといった原材料を溶かして流し込み、製品が作られていきます。
金型には後述しますが、「プレス用金型」「鋳造用金型」「プラスチック用金型」などがあり、依頼によってさまざまな金型が製作されています。溶かして曲げるといった加工は金型を使って多くの精密な製品まで製作可能です。
この金型の依頼を受けて設計するのが「金型設計」の仕事といえます。金型の出来が悪いと加工される製品の精度にも影響します。
また、3Dプリンタによって金型製作が短期間で作れるようになっており、作業もスムーズなのでさまざまな製品が製作可能となるでしょう。
他の設計との違いを知ろう
工場の分野で金型設計と違う他の設計をみていきましょう。
機械設計
機械設計は医療関係などの精密機器や工作機械などの大型なタイプまで、さまざまな機械の仕組みを設計していきます。コンセプトから形状や部品など必要なものを考え、CADやCAEといったツールを駆使して、実際に設計が実現可能か何度も検証します。
また、実現可能とはいえ、コスト面も抑えないといけません。実際に強度や耐久性も考慮してコスト的にも実現可能な設計図を仕上げていきます。
光学設計
光学設計はカメラや望遠鏡、顕微鏡、照明などのレンズと鏡からなる光学を用いてレンズを設計します。医療機器やデジカメ、スマホカメラや産業機械など、さまざまな分野で光学設計は使われています。レンズの枚数や形状のデザイン、材質を決めていき、最適な条件を導き出していくのが光学設計の仕事となります。
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金型設計の仕事内容
金型設計は金型に流し込んだ金型設計の仕事内容を順に追ってみていきましょう。
依頼を受けて打ち合わせ
まずはクライアントから依頼を受けて打ち合わせを行います。金型はオーダーメイドが主流で、このような金型を作りたいという要望を受けます。どのくらいの生産数を要するのかも強度的に重要です。
打ち合わせ後もメールや電話で何度も確認していき、クライアントからの要望がなるべく通るように、重要素材やパーツでコスト面と相談しながらすり合わせを行います。
設計図とプログラムの作成
細かいすり合わせも完了すると次は金型設計図の作成です。基本的に設計図は3DCADからデータ作成していき、勾配やR、寸法公差、ぬすみ形状など、さまざまな点と線を引いていきます。
図面のデータが完了すると社内で検討し、3DCADを用いてプログラムを作成していきます。金型の加工には複数の種類があり、切削・切断・研削・放電加工と、どの工程をどの機械で作るかをプログラムで最適な加工方法を作ります。
加工・検査・最終確認
プログラムが作成できれば実際に現場で金型の生産に入ります。自分で生産する職場もありますが、基本は作業者に作業指示書(図面)を渡して、素材の調達から加工に入るものです。また、設計だけ自社で行い、金型の製作は外注で依頼するケースもあるでしょう。その場合は別途打ち合わせを行う必要があります。
金型に不備があれば、それを使って生産する製品自体にも不具合が生じてしまいます。特に大量生産するクライアントの場合、耐久性も非常に重要ですので、細かいキズ寸法公差などのチェックは欠かせません。
完成品はバリが立っていないか研磨工程も必要です。クライアント側で怪我をさせるわけにはいきませんし、信頼関係にもつながって次回の受注にも関わります。
金型設計のやりがいと魅力
金型設計のやりがいと魅力をみていきましょう。
モノづくりの現場に携われる
金型設計では金型を作り上げますが、これは製造業の基本ともいえる部分です。金型は非常に多くの種類があり、金型設計の仕事は同じ作業の繰り返しとなる訳ではありません。毎回違う製品の図面を引きますので、頭を悩ますものの、それがモノづくりの現場に携われている実感を味わえることでしょう。
技術を誇れる
金型設計はさまざまなジャンルの業界で使用されている製品を作っています。これまで縁がなかった業界の金型設計を行うこともあるでしょうし、多くの業界で貢献できるのは自身の技術も誇れますし、やりがいも堪能できるものです。
特に高品質でもある日本のモノづくりは世界中で好評価を得ています。自分の技術が日本を支えているという事実を体感できるのは非常にやりがいと魅力がある仕事でもあります。
需要も多くて活躍できるフィールドに困らない
金型設計は需要の大きい仕事でもあります。3Dプリンタによって比較的簡単に設計できる面もあるものの、どのようなジャンルの製品にも高品質な金型は必要ですので、まだまだ金型設計士が活躍できるフィールドはたくさんあるものです。
金型設計の仕事はオーダーメイドが基本ですから、だれでもすぐに高品質の金型を作成できる訳ではありません。それゆえに金型設計は転職でも有利で活躍できるフィールドに困らない仕事といえるでしょう。
代表的な金型
次に代表的な金型を紹介していきます。主流となるのが「プレス用金型」と「プラスチック用金型」です。
プレス用金型
金型といえば多くの人がイメージしやすいのが、プレス機を使ってさまざまな加工をするプレス用金型です。プレスといえば圧縮するという認識を持った人も多いものでしょう。実際には圧縮加工以外にも「せん断加工」「曲げ加工」「絞り加工」「成形加工」などがあります。
自動車部品には多くのプレス用金型が使用されています。
・圧縮加工
圧縮加工は熱を加えて変形する加工方法で、素材への刻印や押し出し、わざと潰して側面に穴を加工することもあります。
・せん断加工
素材を切断・分割・切り抜き、穴開けなどを行います。また、切り込みをして曲げ加工と連携し、素材を折り曲げることも可能です。
・曲げ加工
文字通り素材を曲げていく加工となります。代表的なのがL字曲げ・V字曲げ・U字曲げの3タイプといえるでしょう。素材をパンチで加圧して形状を折り曲げていきます。
・絞り加工
深さがある容器状の製品を加工します。素材をしわ押さえというホルダーにセットし、上からパンチで加圧していきます。深さが欲しい場合には2回目の絞り加工を行って調整することが可能です。工数は削減できますが、加工の難易度は高いのが特長的です。
プラスチック用金型
プラスチック用金型はペットボトルに代表されるように、医療機器や自動車部品、日用品に至るまで多くの樹脂製品が加工されています。プラスチック用金型には「射出成形」・「圧縮成形」・「押出し成形」・「吹込成形」・「真空成形」などの成形方法があります。
・射出成形
材料を加熱して溶かし、金型に流し込んで冷やして成形します。主流の成型方法で、簡易で大量ロットに対応できるメリットが特長です。
・圧縮成形
金型に入れた材料を圧力と熱で圧縮する成形方法です。工数を抑えられるメリットがある反面、形状によっては成形できないこともあります。
・押出し成形
加熱したプラスチックを金型から押し出して成形します。金型内部では冷却しないので、押し出し口を通過してから冷却して固化するのが特長です。
・真空成形
金型の雄型雌型に関わらず、どちらかの金型を真空状態にして、樹脂を吸い付かせて成形します。卵のトレーや車のバンパーなど、製品の大小に関わらず薄い形状の加工に適しているのが特長です。
その他の金型
・鋳造用金型
鋳造用金型は金属を溶かして流動性が生まれ、成形する方法です。砂型もありますが、一度作ると取り出すときに壊さないとなりません。一方金型は大量生産に優れています。
・ダイカスト用金型
鋳造用金型に含まれています。亜鉛やマグネシウム、アルミ合金を高圧で流し込み、急速に冷却して固めていきます。
・鍛造用金型
金属材料に圧力を加えることで強度を増していき、変形と成形をしていきます。ジェット機のファンなどの重要保安部品や自動車のクランクシャフトなどに使われています。
金型設計士は将来性が見込める
金型設計士の将来性がどうなっているのか気になるものでしょう。基本的に金型がなくなるとは考えにくいものであり、日常生活に必要な日用品もさまざまな新製品が登場していいます。
SNSの普及で品質にも不備があればすぐに拡散するケースもあり、高品質を維持できる金型はまだまだ必要となるでしょう。もちろん、だれでもいいという訳ではありません。金型設計士としての知識や技術に優れている人ほど重宝されますので、今後の需要は大きく将来性も十分見込めます。
金型設計士に向いている人
金型設計士に向いている人は勉強熱心であり、コミュニケーションが取れる人です。まず勉強熱心についてですが、金型は非常に多くの種類の製品を携わっています。新商品がどんどん開発されていくなかで、素材や加工方法など、日々勉強して取り組む必要があります。
手作業で図面を引いていた人もCADの実務スキルが必須になったように、常に新しいことにチャレンジする精神も必要となるでしょう。
また、コミュニケーション力も必須です。クライアントとの打ち合わせでは、先方の要望通りの図面を作成しないとなりません。また、出来上がった設計図をもとに技術者と密にコンタクトを取り、納品スケジュールを遵守していきます。コミュニケーション能力が怠ると、出来上がった製品がクライアントの要望に沿ったものでない可能性があります。
どちらの意図もくみ取って作業が滞ることなく進捗を確認していくのが金型設計士には求められるでしょう。
金型設計で活躍できる資格
今後の需要も十分見込める金型設計士ですが、特に必須といえる資格はありません。ただ、スキルを身に付けている証明として、実際に活躍できる資格は2つあります。それぞれの違いをみていきましょう。
金型製作技能士
金型製作技能士は、まさに金型製作のプロフェッショナルでもある国家資格です。金型製作技能士は「プレス金型製作」と「プラスチック成形用金型製作」に分類されており、それぞれの金型は特級、1級、2級があります。
この資格は実務経験が必要であり、2級でも実務経験2年以上が必要となっています。学科試験と実技試験からなり、就職してから受験資格を得ることになるでしょう。金型製作技能士は国家資格なので、転職にも有利ですし、製造業や工場でも活躍の場が大いに見込めます。
CAD利用技術者試験
金型設計の図面を引くのにCADを活用するものですが、この知識を評価するのがCAD利用技術者試験となります。独学でもスキルは磨けますが、転職時に評価されるので早めに取得するのがおすすめです。
試験は2次元(2D)と3次元(3D)に分かれており、ともに1級、準1級、2級とあります。この内2級は筆記試験のみとなっています。
金型設計では主に3DCADが主流ですので、こちらをメインに受験するのがいいでしょう。CADを使えると多くの求人に応募することができますので、この資格は転職の際に有利となります。
金型設計の勤務先や年収
金型設計の勤務先や気になる年収をみていきましょう。
金型設計士の主な勤務先
金型設計士の主な勤務先は金型製作企業やメーカーの部品工場です。中でも中小企業が多いので、全国に事業所があるのが特長です。3DCADの導入によって作業時間は削減されているものの、金型は基本的に受注生産なので、工期が重なるとシビアなスケジュールが組まれてしまいます。
金型を製造する技術者は高齢化が進んでおり、熟練者の技能伝承が課題となっている事業所も少なくありません。
金型設計士の年収
厚労省の職業情報提供サイトによると、令和3年の金型工全般の年収は429.1万円となり、平均賃金は22.2万円で平均年齢は42.6歳となっています。80%の割合から正社員で構成されており、あらかじめスケジュールが決まっているので残業も珍しくないでしょう。
厚労省:職業情報提供サイト
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/253
まとめ
金型は製造業の要でもあり、オーダーメイドが主流なので高品質を誇る日本のモノづくりに欠かせない存在です。それだけに金型設計は将来性も十分見込めますし、さまざまな新商品の開発で仕事の幅も広がります。
金型には「プレス用金型」や「プラスチック用金型」があり、自動車部品を始め、日常生活に欠かせないものにまで広く使われています。また、勉強熱心でコミュニケーション力にも長けた人は向いているでしょう。