製造業への転職を検討しているとき、溶接の職種を目指している人も少なくないでしょう。工場では欠かせないのが溶接の仕事です。溶接は機械工場や食品工場の生産現場には不要であっても、工場内の保全や修繕、カイゼンに溶接はとても重要な役割があります。
溶接の資格を有しているだけでも工場への転職は断然有利になりますし、スキルアップにもつながります。そこで、工場で活躍できる溶接資格の種類や試験内容、費用などを紹介していきます。
工場で溶接が必要とされる理由
工場では何かと溶接が必要となるものです。溶接は金属同士を接合させるので、現場にとって役立つ要素が多くあります。どのような場面で役立つのかみていきましょう。
保全や修繕には必須
工場では定期的に機械のメンテナンスが必要になります。予防保全や修繕ともいいますが、機械が故障すると生産活動に支障をきたすため、あらかじめ悪くなりそうな箇所を特定しておき、決まった日程でメンテナンスを実施します。
機械にはそれぞれ部品が付いていますが、毎日何十時間と連続稼働していると、消耗していきますし、摩擦が生じる部分には亀裂なども入りがちです。自動車のタイヤ同様、すべて消耗品なのでこれは致し方ない面もあります。
亀裂が入った部分や金属疲労で変形した部品などを一度外して再度付け直す場合に溶接が使われます。母材を使って電圧で高温に加熱し、融解して冷やすと接合できます。で何度も稼働になる前に
カイゼンに役立つ
溶接はカイゼン活動にも役立ちます。カイゼンは工場における生産性向上のためにムダ取りをしていくことです。ムダを削除して品質や生産性を上げていくときには何か新しい部品を制作することも多々あります。
しかし、新規で部品を製作するのは業者に見積もりからとなるので何かと時間がかかります。そこで現場で溶接できるようになると、新しく部品を製作することが可能です。たとえ仮の製作だとしても、これがベースとなるので一から作り上げるわけではありませんから、業者に発注するときにも見積もりを抑える効果が見込めます。
板金加工には必要不可欠
自動車工場や修理工場では板金加工が必須といえるでしょう。板金加工とは薄い板状の金属に力を加えて変形させていき、切断・曲げなどを経て溶接していきます。板金溶接ともいいますが、2つ以上の金属を溶接によって接合していくことで強度が増していきます。
溶接を使った製品は日常生活においても欠かせないものとなっており、自動車以外も生活家電などにも幅広く使用されています。
溶接の基礎知識
溶接の資格取得にはある程度の基礎知識が必要になります。まず溶接は「融接」「圧接」「ろう接」と3つの種類に分かれます。それぞれの違いをみていきましょう。
融接
溶接の中でも最もメジャーな方法となります。母材と溶接棒に電圧を通していき、高温で溶かしたあとに冷却して接合されていきます。融接の中でもアーク溶接が特に使用されており、高温だけでなく強烈な光を発することから、テレビや動画の中でもよく取り上げられているので一般的な溶接のイメージといえるでしょう。
圧接
代表的なのがスポット溶接ともいわれており、電極で挟み込んだ母材に電流を流すことで電気抵抗が発生し、点で溶かすことが可能となります。
ろう接
鉄以外の銀や亜鉛などの融点の低い材質の溶接に適しています。ろう接は母材を溶かさずに溶加材のみを溶かして接合します。
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溶接資格の種類・試験内容・費用
それでは工場勤務における溶接資格の種類や試験内容、費用をそれぞれみていきましょう。技能講習、特別教育、国家資格に分かれています。また、費用は試験科目によって異なり、一定となっていませんので注意が必要です。
アーク溶接作業者
溶接の中で最もポピュラーながら人気の高い資格になります。未経験からでも取得可能ですので、まずは押さえておきたい溶接資格です。
アーク溶接は特別教育を修了するだけでいいので、厳密には資格というよりも「アーク溶接等特別教育」となっています。ただ、難易度も極めて低く、溶接初心者が最初に取得する資格といえるでしょう。
アーク溶接作業者の試験内容と費用
溶接の基礎知識を学び、学科が2日間で11時間、実技は1日間で10時間と3日間のみで修了となります。満18歳以上ならだれでも受験可能で、修了試験も難しくないのでほぼ100%に近い合格率を誇ります。
試験にかかる費用は10,000円~20,000円程度となっています。
ガス溶接技能者
可燃性ガスや酸素を用いて溶接するのに必要な資格です。アーク溶接よりも時間がかかる分、比較的温度調整がやりやすくて溶接部分を視認しやすくなっています。アーク溶接と並行して受講するのもおすすめです。
ガス溶接技能者の試験内容と費用
ガス溶接技能者は技能講習を受講すれば、18歳以上ならだれでも取得可能です。学科8時間と実技5時間の13時間で、試験内容も難しいものではなく、合格率もかなり高いものとなっています。
費用は10,000円~20,000円前後となっています。
アルミニウム溶接技能者
自動車工場の溶接に必要となるのがアルミニウム溶接技能者です。アルミニウムは鉄よりも溶けやすいので初心者には溶接しづらいのが難点といえます。満15歳以上から受験可能ですが、実務経験が必要となります。
アルミニウム溶接技能者の試験内容と費用
アルミニウム溶接技能者は基本級と専門級に分かれており、専門級は基本級を取得する必要があります。基本級は実務経験1か月以上が対象で、学科試験はアルミニウムの基本や溶接方法、検査や災害防止などが含まれています。
費用は材料費も込みで10,000円~30,000円程度となっており、別途認証量が4,000円程度必要となるでしょう。
ボイラー溶接士
普通と特別の2種類があり、普通ボイラー溶接士は溶接部が25ミリ以下のケースなどボイラーに関わる多くの溶接を行えます。ボイラー溶接士は国家資格となりますので、合格率は若干下がるのが特徴です。
ボイラー溶接士の試験内容と費用
普通ボイラー溶接士は一部溶接を除いて溶接実務経験が1年以上必要で、学科試験と実技試験を行います。特別ボイラー溶接士は普通ボイラー溶接士を取得後に溶接実務経験が1年以上必要となっています。こちらも学科試験と実技試験があります。
費用はどちらも学科試験が6,800円で、実技試験が普通ボイラー溶接士は18,900円、特別ボイラー溶接士は21,800円です。
ガス溶接作業主任者
ガス溶接技能者の指導・監督者として携わるのがガス溶接作業主任者です。こちらはガス溶接に実務経験が必要となり、自動車工場などさまざまな工場で求められています。そもそも、ガス溶接技能者が資格を取得しても、こちらのガス溶接作業主任者がいないことには工場内でガス溶接ができません。これはガス溶接が危険な作業のため、労働安全衛生法で事業所内にガス溶接作業主任者の選定が義務付けられているからです。
ガス溶接作業主任者の試験内容と費用
ガス溶接作業主任者の試験は学科のみとなっています。これはガス溶接技能講習が現場の作業に従事するものの、ガス溶接作業主任者は作業方法や指揮を執るのがメインであるからです。実際に試験自体はだれでも受験できるという広き門となっています。
ただ、免許を交付する際にはガス溶接技能講習を修了して実務経験が3年以上必要になります。ガス溶接のキャリアアップを図るのに適しているでしょう。
試験内容はガス溶接の幅広い知識と法令、アセチレン溶接関連の問題が出題されます。
費用は学科のみとなるので6,800円となり、免許交付時の収入印紙代を含めても10,000円には満たない費用となっています。
溶接作業指導者
日本溶接協会が認定する民間資格ですが、溶接の作業者全般に作業工程などの指示や指導を行います。工場で必須の資格ではありませんが、自身が溶接に携わるためのキャリアアップにつながる資格といえます。
国家資格ではなくても、この資格を有しているだけで溶接の知識やスキルを持っているとみなされて、転職に有利となるでしょう。
溶接作業指導者の試験内容や費用
溶接作業指導者の受験資格は満25歳以上で溶接の技量資格が必要で実務経験も3年以上が目安とされています。試験内容は3日間の講習を受講後、筆記試験に合格すればいいので特別難しいというわけではありません。
費用は54,050円と比較的高額になり、溶接管理技術者の資格を有していれば23,600円となります。
溶接管理技術者
溶接作業指導者の費用が安くなっていたのは、この資格を有している人が対象となります。しかし、一般的な製造業・工場の現場では溶接管理技術者まで求めていないこともあります。どちらかというと製造業よりも工業や建設業がメインとなり、溶接作業指導者の上位資格として存在しています。
溶接管理技術者の試験内容と費用
幅広い溶接技術と知識を有し、工場だけでなく建築現場や工事現場はもちろん、化学プラントなどの大きな設備が整っているエネルギー施設まで活躍の場が広がっています。
2級・1級・特級の3種類があり、筆記試験と口述試験に分かれています。それぞれが溶接方法や溶接に関わる機器の構造・設計・施工など、管理監督者の立場して出題されます。
溶接管理技術者の費用は2級と1級が筆記試験で12,960円、口述試験が21,600円です。特級は筆記試験1と2があり、2つ受けると25,920円(筆記試験2のみだと12,960円)、口述試験が27,000円となります。
また、試験に合格しても登録料として19,440円が必要となり、費用のかかる資格となっています。
まとめ
溶接は工場で欠かせない仕事となっています。アーク溶接やガス溶接の資格は比較的取得しやすく、溶接初心者には最適といえます。キャリアアップを図るためにも溶接資格は必須ですので、ガス溶接作業主任者や溶接作業指導者の取得を目指すようにしていきましょう。