自動車の点検・整備をおこなう自動車整備士は、自動車を安全で快適に使用するため点検・整備をおこなう「自動車のお医者さん」です。自動車をはじめ、機械に興味のある人にとって1度は憧れる職業ではないでしょうか。しかし、実際にどんな仕事をしていて、どうすれば自動車整備士になれるのか知らない人も少なくありません。そこで、未経験者や他業種から自動車整備士へ転職を考える人に向け、業務内容や求められるスキルについて解説していきます。
自動車整備士とは
自働車は車体(ボディ)・エンジン・駆動系・サスペンションの4つに大きく分けることができます。ボディの傷やへこみを直す板金塗装などの一部を除き、自働車のエンジンや発生した力をタイヤへと伝える駆動系、タイヤと車体を連結するサスペンションを分解・整備するためには、国家資格である自動車整備士資格が必要です。
自動車整備士は一般的にディーラーやカーショップ、整備工場、カー用品店、ガソリンスタンドで活躍しています。自動車整備士は車検や修理、法定点検だけでなく、タイヤ交換やオイル交換といった整備士以外でも可能な作業も任されることが多く、自動車を所有するユーザーにとって身近な存在ともいえるでしょう。
自動車を保有する人は年々減少傾向にあるものの、2021年の普通自動車保有台数では約3,100万台となり、人口世帯が約5,000万世帯ですから、おおよそ6割の世帯で車を所有している計算となります。また、社有車を普段運転する人も多いでしょう。
自動車の世界販売台数では、日本ではトヨタ自動車を始め、20位までに日産・三菱やホンダ、スズキ、マツダ、スバルといった有名メーカーが軒並み揃い、自動車整備士が欠かせない存在となっています。
※参考:国土交通省 数字で見る自動車2021
https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001484006.pdf
※参考:総務省 住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数
https://www.soumu.go.jp/main_content/000762475.pdf
自動車整備士の仕事内容
自動車整備士は主に、車検や定期点検などの点検・整備、修理が必要な個所の分解整備などの業務をおこないます。基本的に一番のメインとなる業務が点検作業です。点検してから修理するか次回までに部品の手配を行うのか考えていきます。
また、新車や中古車の納入時には必ず点検作業が必要ですし、法定点検と車検を一緒に考えているユーザーが多いため、車検時に2年ごとの法定点検を実施することが多く見られます。
整備工場では1台の自動車整備を一人の整備士が担当するため、オイル交換やタイヤ交換など、自動車整備士資格を必要としない作業も行うことが一般的です。たとえばスタッドレスタイヤに交換する場合、カー用品店では「自動車整備士の有資格者が交換対応」と謳っていることがよく見られます。これはユーザーに安心感を持ってもらうためにも必要といえます。
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自動車整備士の資格は3つに分かれている
自動車整備士の資格は、一級、二級、三級に分類され、その中でもいくつかの種類に分かれます。自動車整備の大半の作業で二級以上が必要のため、自動車整備士として活躍するにはまず二級を取得することが必須です。
三級は基本的な整備のみ対応可能で、一般的に専門の学校以外から取得を目指すと二級の受験資格である実務経験のために必要です。一級は自動車整備のスペシャリストとして、企業内で管理・指導者的立場を目指す人が挑戦する傾向が強くなります。
三級自動車整備士
三級自動車整備士はエンジンの分解や足回り以外の基本的な整備を行えます。
・三級自動車シャシ整備士
・三級自動車ガソリン・エンジン整備士
・三級自動車ジーゼル・エンジン整備士
・三級二輪自動車整備士
上記の4つに分かれています。
二級自動車整備士
ほとんどの自動車整備に携わる人が取得を目指す国家資格です。自動車整備主任者にもなれるので、ほとんどの自動車を整備可能となります。
- 二級ガソリン自動車整備士
- 二級ジーゼル自動車整備士
- 二級自動車シャシ整備士
- 二級二輪自動車整備士
二級も三級同様に4つに分かれています。
一級自動車整備士
自動車整備士としては二級でも十分活躍可能ですが、これらの整備士を管理監督する立場にあるのが一級です。さらに一級自動車整備士ではより高度な知識を有することとなります。
- 一級大型自動車整備士
- 一級小型自動車整備士
- 一級二輪自動車整備士
一級自動車整備士は上記の4つに分かれています。
自動車整備士全体の特徴として、いくつもある種類の中から一つを選択し受験します。
自動車整備士資格の取得方法
自動車整備士資格は、技能検定試験に合格することで取得可能です。試験内容は学科試験と実技試験に別れ、両方に合格する必要があります。どちらか一方が合格していた場合は、合格証が発行され、合格した試験は次回からは免除になります。
自動車整備士になる方法は大きく2つに分かれます。一つは専門学校や職業訓練校に通い二級自動車整備士の取得を目指す方法です。専門学校や職業訓練校を終了すると、二級自動車整備士を実技試験免除で受験でき、合格率も高くて最短2年で取得できます。
ただ、専門学校になると学費が高く、入学金や授業料、教科書代に作業着台を含めると、年間100万円以上はかかる見込みです。特に1級自動車整備士を目指す場合、4年コースになるので文系私立大学と変わらないくらいの費用が必要となるでしょう。
もう一つの方法は、実務経験を積んで三級自動車整備士取得後に二級自動車整備士を目指す方法です。未経験から自動車整備士に転職する場合、実務経験を積まなければなりません。三級受験に1年、三級合格後に二級受験まで2年の実務経験が必要です。最短取得していっても3年程度かかります。
一般的な目線では学生と違って働きながら勉強しなければならず、ハードルも高く感じられます。ただ、ほとんどの職場では資格取得を奨励しているものなので、会社が協力的になってくれるのは心強いといえます。
自動車整備士のやりがい
自動車整備士として働くことは、人の命に係わる重要な仕事をしていると実感できます。小さな見落としやミスが重大な事故の原因になるため、正確に点検・整備をしようと心掛ける責任感が生まれ、違和感を見逃さない観察力も身に付いていきます。
また、難しいトラブルや困難な作業を終わらせたときの達成感や、自分が整備した自動車が颯爽と走るのを見かけた時もやりがいを感じる瞬間です。
基本的に車好きが取得する資格ですので、一般的に多く流通している車種はもちろん、懐かしい車や高級車、外国車など自分では購入できないような車種でも携われる機会があるのは車好きにはたまらないでしょう。
自動車整備士に向いている人
自動車整備士は、毎日同じ様な作業に見えて、中身はまるで違うことが多く、根気と対応力が必要な仕事です。また、最新型から古い年式の自動車まで、多種多様な作業を行う必要があるため、日々学習し、経験を積む必要があります。探求心がある人、1人でコツコツと作業できる人、そして、熱意をもって仕事に取り組める人です。
自動車業界は、電気自動車やハイブリッド車の増加など、常に進化を続けている業界ともいえます。新しい装置や制御にも迅速に対応できるよう、勉強する姿勢を持ち続ける人にも向いているでしょう。
自動車整備士に向かない人
当たり前ですが自動車が好きでない人はもちろんのこと、集中力の続かない人、機械や家庭用電化製品の操作や取扱い説明書を読むことが苦手な人には敷居の高い仕事かもしれません。
自動車整備士の年収・待遇・見通し
先述しました通り、日本は世界有数の自動車産業が盛んな国でもあります。春闘などの傾向もトヨタやホンダといった大手自動車メーカーの動向が影響されやすいものです。その上、自動車は法律により車検や法定点検を受ける必要があるため、自動車整備士は見通しが良く需要の下がる心配はいらないでしょう。
ただ、近年では若者の自動車離れが進み、カーシェアリングの普及など、自動車の購入に興味を持たなくなって、自動車整備士志望者も減少傾向にあります。そのためメーカーや整備工場などの企業は少子高齢化社会に向けて自動車整備士の確保は急務といえ、中途採用の求人も資格の有無に関わらず全国で見うけられ、将来的に見通しが良く売り手市場ともいえる状況です。
自動車整備に関わる仕事の求人は自動車の保有台数に比例するので、都会より地方の方がより多くの求人が出される傾向にあります。
企業の特色が出る就労形態
整備工場では一般企業と同じ土日が休日の職場が主流です。個人ユーザーから企業・団体で使用される公用車まで、様々な自動車の車検や点検を請け負う地域密着型の業務形式といえます。自動車ユーザーの利便性に合わせ、最近では日曜・祝日でも営業する企業もあります。このため、交代制の休日制度を採用している職場も少なくありません。
オートバックスに代表されるカーショップでも多くの自動車整備士が勤務しています。主な業務は点検・部品交換・修理になりますが、ユーザーと接する機会が多く、レジ業務も覚えなくてはなりません。
自動車整備士は屋外で使用する自動車の整備に携わるため、就業場所は屋内でも外気温の影響を受やすく、油脂類による衣服や手の汚れが発生しやすい環境です。作業によっては辛い姿勢や重い部品を持ち上げることもあります。最近では、最新機器の導入で作業負担の軽減を図り改善を進める職場や、夏場にクールスーツの着用などを推奨し快適性を上げる企業努力もされています。
給与面は急速に増加中
少子高齢化における人材不足は自動車業界においても同じといえます。そのため、自動車整備士の不足が深刻化しており、自動車整備士の平均年収は増加傾向です。中でも、ディーラーやそれに直結する民間の整備工場は職場環境の改善と共に収入アップが見込まれています。
自動車整備士としての年収は全国平均で430万円前後(賞与込み)となります。これは男女や年齢差、従業員規模に関係なく、厚労省の賃金構造基本統計調査に基づいての算出です。
ここに年齢や経験、企業の規模や資格の有無による諸手当、役職についているかどうかで収入は異なります。また、時間外労働の多さも大きく関係するので、就労条件を詳細までチェックする必要があるでしょう。規模の大きな企業ほど待遇が良くなるのは他の業種と同じです。
自動車整備士への転職は検討するのに十分な価値がある
普段の生活や仕事で自動車を使用する人は多く、物流の主役でもある自動車。人材不足の中それを支える自動車整備士や、それを目指す人を獲得しようと好待遇の求人を出している企業も多く見受けられます。「自動車が好き」という情熱と興味をお持ちなら、将来的に見通しが見込める自動車整備士を目指し、自動車整備のプロとして活躍できる選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。