未経験者なのに製造業の工場で働けるのか不安に感じている人も少なくありませんが、実は工場で働いている人は未経験スタートが多いです。工場勤務は現場(ライン作業者)とスタッフ職に分かれていますが、未経験者の転職ではどちらも可能であり、製造現場なら年収アップも見込めます。
ここでは未経験からの製造現場への転職をおすすめする理由を解説していきます。
他の工場に染まっていない未経験者を歓迎する工場は多い
工場勤務を専門職のように感じ、未経験では転職のハードルが高いと思ってしまう人も多いでしょう。確かに製造業も部署によっては大型の研削機や旋削盤を扱うので、全くの未経験では厳しい仕事もあります。
しかし、ベテランの作業者も初めは誰もが初心者です。自動車に代表される製造業の工場も中途採用の社員が多く、一流企業といわれる大手メーカーでも未経験転職から正社員へ登用されている人は少なくありません。
製造現場は期間工として未経験の中途採用を歓迎
特に中途採用を歓迎しているのは現場の製造ラインです。立ち仕事が基本の生産ラインの仕事は、座ることがほとんどありません。慣れるまでは足腰がつらい人でしょうが、仕事を覚えていけば機械(設備)に触って段取り(違う製品を流すために機内の部品や加工条件を組み替える)やメンテナンスをする機会も多くなり、どんどんやりがいが増していきます。
また、製造現場は売上を上げていく職場ですので、忙しい工場ほど夜勤や休日出勤も多いです。
採用枠は1人や2人ではなく、まずは非正規の期間工として一定人数を募集する工場が多いです。もちろん、期間工とはいえ、真面目に仕事を励めば正社員として登用される可能性は高まります。
さらに企業側の思惑として、工場未経験者は他の工場のやり方に染まっていないため、教育しやすいというメリットがあります。現場の勤務には安全や品質をメインとした規則が多く、工場独特のルールもあるので「前の職場ではこうだった」という先入観を持っていない未経験者を歓迎する職場は少なくありません。
経験者は改善を期待できるので即正社員採用も可能
ただ、製造業の未経験者は生産ラインで長続きするか判断が難しいので、期間工からスタートすることもありますが、他の工場で現場経験がある場合は即戦力として正社員採用されやすくなります。
これは主に2点の理由があります。一点は貴重な人材を他の工場に持っていかれたくないから。もう一点は、即戦力として改善活動が期待できるからです。
基本的に製造現場は、ムダをなくして効率化を図ることで生産性アップにつながります。一つの製品を加工するサイクルタイムの短縮、設備の段取り時間の削減、不良廃棄率の削減など、経験者なら転職先でもアイデアを出せるでしょう。
未経験者だと今の作業内容を把握することで精いっぱいなので、なかなか改善活動にまで力を入れることができません。
このように、企業が経験者と未経験者を求める理由は異なります。じっくり育てる未経験者に対し、経験者は現場をいい方向に変えていく力を期待されています。
現場以外のスタッフ職も未経験で転職可能
多くの工場では、仕事は現場とそれ以外のスタッフ職に分かれています。このうち製造業の現場以外の部署として上がるのが「生産技術」「生産管理」「品質保証」「管理(総務)部」です。
工場によってはより細かく分けているでしょうが、大きくは上記4つがメインです。
ものづくりの要となる「生産技術」
「生産技術」はものづくりのエキスパートです。工場内設備の改善はもちろん、メンテナンスや修理、部品の発注など、製品を作る工程を現場の外からサポートします。
生産技術は「研究」「設備保全」「生産改革」「電気」などのグループに分かれます。
「研究」は相当の知識が求められ、「設備保全」は機械に詳しい必要があるので、製造業未経験からではハードルが高いです。
「生産改革」は現場だけでなく工場全体でのムダをなくしてQCサークルなどの改善活動を推し進めるので、製造業未経験者でも新しいことに携わりたい気持ちがあれば転職可能です。
「電気」はその名の通り電気関連のプロフェッショナルです。「電気工事士」「電気主任技術者」の資格を持っていれば優遇されます。
数字に強くて根回しが大切な「生産管理」
「生産管理」は、生産進捗を管理する仕事です。注文に基づいて材料の調達から場内への納入、工場内での進捗、出荷までの全体的な流れを追います。ただ工場全体を把握するわけではなく、自分の担当する生産ラインの進捗管理を行います。
工場内だけでなく、場外の進捗も管理しなくてはならないので、数字の管理が苦手という人にはあまり向いていません。
たとえば部品メーカーの場合、部品の注文を受けると材料を提供してくれる鋼材メーカーに発注し、旋削メーカーで鋼材が加工されてから納入されます。
生産管理は、この進捗を追いかけて製造現場にいつごろ納品されるのか伝えます。現場はそれに合わせて設備の段取り替えを行います。自社工場が最終完成品(販売できる状態の製品)の場合、営業とも連絡を取り合い、最終納期に間に合わせるよう現場を管理しなくてはなりません。
また、何かトラブルが発生すると納期調整をするなど各方面に連絡を入れる必要があるので、根回しが大切になります。最初は苦労しますが、製品の知識は仕事をやりながら覚えていけるので、未経験者でも転職できます。
未経験者からでも可能な「品質保証」
「品質保証」は、工場内で生産される製品の品質を管理します。廃棄不良率の削減や完成品データの登録・確認など、彼らの仕事が客先に製品を出荷しても問題ないと保証してくれます。
製品にトラブルが発生すると良品と不良品の選別を行い、原因調査から対策を現場に指示を出します。品質的に現場がいくらOKを出しても品質保証がNGと判断すれば、製品は出荷できません。
また、ISOや客先からの監査に対応するのも品質保証の仕事です。
たとえ現場を10年経験しても、品質保証の仕事は一から覚えないといけません。言い換えれば、未経験者から始められる仕事です。
工場全体をサポートする「管理(総務)部」
「管理(総務)部」は、工場全体をサポートする事務方の仕事です。受付や会計などの一般的な事務仕事はもちろん、日報の管理や工場内の安全面の確認などを兼ねている職場もあります。
前職で事務(製造業以外でも可)の経験者は問題なく転職できるので、縁の下の力持ちで工場をサポートしていきたい人には向いています。
「営業職」は工場では採用していないケースが多い
営業職で働きたい人もいるでしょうが、一般的に工場は製品を製造する職場であり、顧客と対応するのは営業所や本社というケースが多いです。地方に大きな工場を持っている企業は首都圏などの大都市に営業所を構えています。そのため、工場によっては募集をかけていないことがあるので注意しましょう。
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工場未経験者なら製造現場がおすすめの4つのポイント
工場勤務未経験者の場合、現場とスタッフともに転職可能と説明してきましたが、おすすめなのは製造現場です。その理由として4つのポイントを挙げていきます。
1. 現場は常に人手不足
少子高齢化が進み、どの工場でも現場は人手不足です。また、製造業は期間工を採用しているケースが目立ちますが、これは正社員を望んでいる人ばかりではないことが挙げられます。働き方改革で非正規社員を削減する取り組みなどが報道されていますが、正社員よりも責任感が軽減される期間工のスタイルがいいという人が一定数いるものです。
期間工は契約期間が定められていますが、寮完備で交通費も必要なく食費も安く済むというメリットがあります。1~2年しっかり働いてお金を貯めて環境を変えたいという人には最適です。
そのため、期間工が定着せず、慢性的に人手不足に陥っている工場もあるので、製造ラインの現場には転職しやすいといえるでしょう。
2. 高齢化が進み技能伝承が必要
高齢化は現場の人が減るだけでなく、ものづくりにおける職人、つまり後継者が減ってしまうことも懸念されます。企業には今後20~30年は働いてほしい20~30代の若い世代に技能を伝承したいという思いがあるので、やる気に満ちあふれている転職者を積極的に採用したいと考えています。
そのため「自己を成長させたい」「スキルアップに努めたい」という人にも、製造現場での転職はおすすめです。
3. 手当が多いので給与アップが見込める
多くの工場は、2交替や3交替勤務で24時間フル稼働しています。このような工場勤務では交替勤務手当、深夜手当、残業手当、休日出勤手当など手当が充実しており、前職より年収アップが期待できます。
一方スタッフ職は、自分が生産して売上を立てている訳ではないので、一般的に残業は認められていない職場がほとんどでしょう。日勤になるので交替勤務や深夜業務がありません。基本給のみの扱いになるので、給与は製造現場のほうが多くなります。
4. ものづくりで一番力があるのは現場
スタッフ職は上長との会議や、工場長や他の工場勤務者と接する機会があるので人脈を広げられます。一方、製造現場は班長や係長といった責任者が会議に参加する程度です。
人脈を増やせば出世もしやすいですが、ものづくりで一番力があるのは、やはり現場です。
スタッフ職や、係長、課長、部長といった上長、さらにトップの工場長でさえ、現場で経験を積んだ一般作業者には頭が上がらないことがあります。これは作業者ほど製品に対する知識や技術といったスキルが身についておらず、会話に付いていけないからです。
未経験から転職しても現場の仕事はスキルが上がりやすく、やりがいも増えていくので楽しい職場といえます。転職後10~15年と現場で働けば、どこへ配属されてもやっていけるだけの力がついています。また、スタッフ職へ異動しても知識を活かして仕事を進められます。この点からも現場で経験を積めば出世は十分可能です。
まとめ
製造業の工場勤務は、未経験者からでも転職できます。未経験者の場合、基本的には期間工スタートですが、即戦力として採用される場合もあります。また、現場以外のスタッフ職も未経験から転職可能です。
工場で働くのが初めてなら、まずは製造現場勤務がおすすめです。現場は常に人手不足で、後継者不足に悩まされています。スキルが身につき、各種手当が充実していて年収アップも見込めるので、やりがいのある仕事といえるでしょう。