工場を退職した女性のうち、多くの人が「トイレや更衣室が男女共用だった」を理由として挙げています。
以下の記事でもふれましたが、男女共用のトイレは法律違反です。必ず男女で別々に、また従業員の人数に応じた数を用意しなければいけません。
工場の休憩について(時間・回数・取り方・トイレ休憩のルールなど)
では、更衣室のほうはどうでしょうか。「男女別の更衣室作ってくれないかなぁ~」「そもそも工場の更衣室が男女共用って設定だったのがまずおかしいんだな」など、(工場に限らず)男女共用の更衣室に悩む人は少なくありません。
「共用は違法」とは明記されていない
更衣室の場合、トイレと違って「男女共用が違法」と明記された法律はありません。また一人あたりの面積、更衣室の広さなどの仕様について定めた規定も存在しません。
ただし、労働安全衛生法 第71条の2には、「事業者は、快適な職場環境を形成するように努めなければならない」と定められています。
第七十一条の二 事業者は、事業場における安全衛生の水準の向上を図るため、次の措置を継続的かつ計画的に講ずることにより、快適な職場環境を形成するように努めなければならない。
二 労働者の従事する作業について、その方法を改善するための措置
三 作業に従事することによる労働者の疲労を回復するための施設又は設備の設置又は整備
四 前三号に掲げるもののほか、快適な職場環境を形成するため必要な措置
つまり、従業員が「更衣室は男女共用にして欲しい」と思っている=それが従業員の求める快適な職場環境なら、工場などの事業者は更衣室を男女別々に用意しなければならないと考えられます(ただし、この規定は努力義務のため、特に罰則などはありません)
実際、国は何度か、職場環境を改善するよう、事業者に呼びかけてきました。
たとえば、労働者の健康維持や職場の防災徹底などを望む声の高まりを受けて、1992年に労働安全衛生法が改正されました。この改正と一緒に、厚生労働省は「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」、いわゆる「快適職場指針」を発表します。
これは簡単にいえば、職場を以下の4つの点から見直し、従業員が働きやすい環境をつくろうという取り組みです。
1. 作業環境の管理 |
職場の室温や空気環境、ニオイなどを適切な状態にする |
2. 作業方法の改善 |
命の危険がある仕事や力仕事のやり方を改善し、労働者の心身の負担を軽減する |
3. 疲労回復支援施設 |
休憩室や仕事の悩みを相談できる窓口などを用意して、労働者の心身の負担軽減に努める |
4. 職場生活支援施設 |
洗面所やトイレなどの設備を清潔・快適に保つ、給湯室や談話室など休める施設を用意する |
この指針の中で厚生労働省は、次のように述べています。
4 その他の快適な職場環境を形成するため必要な措置
(1) 洗面所、更衣室等の労働者の就業に際し必要となる設備を常時清潔で使いやすくしておくこと。
(2) 食堂等の食事をすることのできるスペースを確保し、これを清潔に管理しておくこと。
(3) 労働者の利便に供するよう給湯設備や談話室等を確保することが望ましいこと。
(安全衛生情報センター公式webサイトより)
ただし、ここには「更衣室を用意して、使いやすくしておくこと」と書かれているだけです。「男女別々に」とは明記されていません。
なお、この「快適職場指針」(正確には、快適職場形成促進事業)は、2010年度に廃止されています。ご注意ください。
トイレや休養室は男女別々に用意しなければならない
法律上は問題ないので、では更衣室は男女共用のままでOK……かというと、そう簡単な話でもありません。
というのも、トイレや休養室など、他の職場施設は男女別々に用意しなければならないと法律で決められているからです。トイレについては先にふれたので、ここでは休養室のみ取り上げます。
休養室については、労働安全衛生規則 第618条に記されています。
(休養室等)
第六百十八条 事業者は、常時五十人以上又は常時女性三十人以上の労働者を使用するときは、労働者がが床することのできる休養室又は休養所を、男性用と女性用に区別して設けなければならない。
(e-Gov「労働安全衛生規則」より)
「男女合計で50人、または女性30人以上の労働者がいる場合、男女別に横になれる休養室を用意しなければならない」とあります。
ちなみに、休養室と休憩室の違いは、以下のとおりです。
- 休養室:体調を崩した場合、横になって休める場所(ベッドや布団が必須)
- 休憩室:休憩時間に休む場所
このように、他の施設が男女別々に用意しなさいとあるため、また更衣室の使用目的を考えた場合、男女それそれで用意するのが妥当と考える人が多いです(社労士などに聞いていただくと、おそらくそう答える人が多数だと思います)
また、内閣府男女共同参画局のまとめた資料「女性活躍加速のための重点方針 2020」にも、「防災分野における女性の参画拡大等」の項目で「女性用トイレや更衣室等の設置を進める」ことを重要な施策として位置づけています。つまり、国も「男女ともに快適に働く上で、更衣室は男女別々に用意すべき」という認識を持っていることが分かります。
こうした背景を踏まえると、法的に規定はされていないものの、更衣室は男女で分けて用意すべき施設であると考えられます。
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国は女性の職場環境より雇用環境の整備を急いでいる
ただし、2019年に改正された女性活躍推進法が顕著な例ですが、国は女性の職場環境より雇用環境の整備を急いでいます。女性活躍推進法の特集ページなどをご覧いただければと思いますが、具体的には、管理職に占める女性の割合の増加、育児休業の取得促進、フレックスタイム制やテレワークの導入による柔軟な働き方の推進などが主な目標として設けられています。
そのため、更衣室などの職場環境の整備が積極的に改善されるかというと、少し難しいかもしれません。女性活躍加速化助成金などには、支給対象となる目標の例として「女性用更衣室などハード面の整備」が挙がっていますが、強く変えていこうとする前向きな姿勢はそこまで打ち出されていません。
工場は上層部の考えが古い人も多く、仮に「作ってください」といっても、無下にされるだけなら良し、最悪な場合、意見したことに腹を立てた相手からパワハラなどの被害を受けてしまう人も少なくありません。
参考→総務の森「男女一緒の更衣室について」
もし男女別の更衣室がある工場で働きたいという人は、面接時などに必ず確認しておくようにしましょう。