メーカーには生産技術という職種があります。名前のとおり、メーカーが商品を生産するときに使用する技術を開発する仕事です。
たとえば、多くの工場はライン作業で製品を生産していますが、生産技術職は、このラインに導入されている設備のプログラムを設計したり、製造工程自体のプロセスを改善したりします。
つまり生産技術の人たちがいないと、工場は製品を生産できません。また製造技術自体を開発する仕事なので、工場の生産効率や製品のクオリティは、生産技術の仕事が支えていると言っても過言ではありません。
このように、生産技術は工場において、最も重要な仕事の一つと言えます。
生産技術の仕事内容について
生産技術の仕事内容は、大きく次の3つに分かれます。
- 製品を生産するために必要な技術の設計・開発
- 製品を生産するために必要な設備の設計・開発
- 製品を生産するプロセスの設計・開発
つまりは、製品の生産を支える技術・設備・プロセスの3つを設計・開発するのが業務です。
メーカーは「こんな商品を作りたい」と考えますが、それを製造できる技術がなければ、企画した商品は実現しません。
また技術があっても、それを安定的に発揮できる設備がなければ、意味がありません。料理人が、料理の技術はあっても、包丁などの調理器具がないと腕を振るえないのと同じです。この包丁にあたるツール(工場内の設備など)を作るのも、生産技術の大事な役割です。
さらに、生産できる設備と技術があっても、大量の商品を安定的に供給できる生産体制(工場の生産ラインの仕組みなど)がないといけません。大量生産ができないと商品単価を下げられないので競合との競争に勝てませんし、顧客の需要にも応えられないからです。
生産技術の仕事内容は、料理にたとえると分かりやすいと思います。
生産技術 |
料理人 |
製品を作る技術 |
料理の技術 |
技術を発揮する設備 |
包丁など |
生産プロセス |
レシピ(調理工程) |
このように料理の一連の流れで必要な技術や道具を設計・開発するのが、生産技術の仕事です。
生産技術で必要なスキル、生産技術に向いている人
生産技術は、上記のとおり専門性の高い仕事です。そのため、未経験から採用されることは基本ありません。たとえば、オリンパスグループの生産技術職の学生時代の専攻分野は、61%が機械・精密系、22%が電子・電気・通信系、12%が化学・材料系など、理系がメインです。
(オリンパスグループ株式会社「生産技術開発ってどんな仕事?」より引用)
文系から生産技術になれなくはないですが、はっきり言って現実的ではありません。
具体的に必要なスキルとしては、主に以下のようなものが挙げられます。
《専門スキル》
- 業界で生産される製品に関する基礎知識
- 当該製品を生産する技術に関する基礎知識
- コスト管理能力
- PDCAサイクルを回し、物事を改善できる能力
《ヒューマンスキル》
- コミュニケーション能力
- 忍耐強さ
- 問題解決能力・論理的思考力
- スピード感
これらの技術を持っている人は、生産技術に向いていると言えるでしょう。
業界や商品製造技術に関する基礎知識
これはすでに述べたとおりです。料理の技術(基礎知識)がないと、料理人(生産技術職)になるのは難しいです。未経験から募集している企業もありますが、企業の競争力に直結する仕事のため(より優れた商品を他社に先駆けてリリースしないと顧客を奪われてしまうため)、新卒社員でもない限りゼロから育成してくれる企業はまずありません。
コスト管理能力
昨今は商品の製造を、中国など外国の企業に委託してコストを削るのが主流です。それにより商品単価を下げて、競争力を確保しています。このように、製造工程のコストを限界まで削るのが、今のメーカーには求められています。
そのため、生産ラインを設計したり、そこで使う設備を設計・開発したりするのが仕事の生産技術職にも、同様のコスト感覚が求められます。より早く・より低コストにクオリティの高い製品を製造する、そんなラインの設計が至上命題です。
PDCAサイクルを回し、物事を改善できる能力
生産ラインをより効率化できないか、生産設備をより高機能化できないか……そうしたPDCAサイクルを常に回し、商品の付加価値を高めていくのも、生産技術に求められる姿勢です。また生産ラインに問題が発生した場合、品質管理などと連携を取りながら、原因を究明・対策を立案しなければなりません。そのためにも、PDCAサイクルを意識して業務に取り組めるかどうかは重要です。
コミュニケーション能力
技術やラインの設計・開発は、企画者や工場のスタッフとの連携が不可欠です。どんな性能・仕様の商品を作りたいのか、どんな生産フローなら働きやすいのか、細かくヒアリングしながら、生産技術や生産ラインを設計・開発する作業が求められるため、コミュニケーション能力は欠かせません。
忍耐強さ
これまでにない生産技術を設計・開発する仕事、いわば0から1を作る仕事です。時に「そんなことできるわけない」と思えるような無理難題に立ち向かわなければならないかもしれません。そうした技術的な困難を乗り越えて形にする忍耐強さは必要不可欠です。
問題解決能力・論理的思考力
仮説・検証を繰り返して、業務を前に進められる力が求められます。
忍耐強さのところにも書いたように、生産技術職は技術的な困難を取り扱います。そのため、問題を切り分けて一つずつ潰していったり、実現可能な仮説を構築・検証したりする論理的思考力がないと職務に耐えません。
スピード感
生産技術開発は、企業の競争力の根幹です。他社が同じような技術、より優れた技術を先に実現して商品をリリースしてしまうと、それだけで市場シェアの大半を奪われてしまいます。そのためスピード感をもって職務に取り組めるかどうかも、求められる素養です。
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生産技術の残業は少ないが、役職につくと一気に増える
生産技術の仕事は「激務」「きつい」という評判がつきやすいです。
もちろん会社によりますが、今の大手企業における生産技術の仕事は、そこまで激務ではありません。業務内容に見合わない知識・スキルしか持っていない人や、未経験から挑戦した人、新卒社員などが、業務に必要な能力を身につける段階で一時的にきついと感じる程度です。
クチコミサイトなどを見てみると、大手企業の場合、0〜10時間くらい、多くても20時間くらいの会社が多いようです。昨今は有給取得や残業抑制の声が強まっており、かなり環境が整備されています(メーカーは労働組合が強い力を持っているケースが多いため、労働環境の改善に積極的な企業が多いです)
ただし、マネジメント層に上がると増える傾向にありました。大手企業でも、だいたい40〜50時間くらいの人が多いようです。
生産技術の人が仕事をきついと感じるのは、むしろ社内の雰囲気や将来のキャリアに対する不安などが大きい傾向にあります。たとえば、旧態依然とした古い日本企業の体質が合わない、上司が最新の技術に対する理解がなくて話が通じない、会社の考えが古くて最新技術に触れられない、といったケースです。
特に大手企業の生産技術担当者は、上司との人間関係や社内政治などに嫌気が差して退職しているという人が少なくありません。生産技術への転職を考えている人は、このあたりをクチコミサイトなどでしっかり確認しておきましょう。
生産技術のやりがいは、商品の根幹を支えている自負
このように、かなりハードルの高い生産技術の仕事ですが、やりがいとしては次のような点を挙げる人が多いようです。
- 製品開発で最も重要な技術を支えている自負
- これまでになかった製造技術を生み出したり、製品を世の中に送り出したりできるのが楽しい
- 自分の設計・開発したものが形になるのが嬉しい
- 生産技術の開発だけでなく、生産工程の設計やマネジメントにも携われ、工場の製造を一貫して支えられる点
ものづくりを支えているという思いが、やりがいとなってモチベーションの維持に寄与している人が多いようです。また、日本の製品はグローバルシェアこそ落ちつつあるものの、今なお世界的には高品質の代名詞。そうした世界最高品質を支えている自負が強いやりがいになっている人も少なくないようです。
生産技術は、専門性の高い仕事ですが、だからこそやりがいにあふれた仕事でもあります。未経験や他業種からの転職は困難な仕事ですが、チャレンジするだけの価値がある仕事と言えるでしょう。