メーカーへの転職を検討している人の中には、資格を取得したほうが有利と考えている人も少なくありません。工場の現場では資格の有無を問わない職場が多いものの、資格を有しているほうが転職時に有利となるものです。
資格は転職だけでなく、そこでのキャリアアップにもつながりますので取得して損はありません。そこで、製造業(メーカー)への転職に対し、取得したほうが有利となる資格やその理由をみていきましょう。
メーカーで資格を持つと有利な点
まずはメーカーで資格を持つと有利な点をみていきます。
待遇面で差が付く
資格を取得すると待遇面で未取得者と差が付きやすくなります。職務と関係ない資格は別ですが、社内で奨励されている資格を有していると、資格手当が支給される工場が多く見られます。
また、給料面でも昇給や昇格の条件に資格の有無を採用しているメーカーも多く、どれだけ現場の仕事ができても奨励資格を持っていないだけで給料が一向に上がらないこともあり得ます。
スキルアップにつながる
スキルアップを目指す人にとって資格は必要不可欠です。設備のメンテナンスや段取り作業には未資格者でも携われることはありますが、基本的に有資格者のチェックや教育が必要となる場合があります。
また、業務の幅を広げることにもつながり、資格を取得するための勉強で、これまで何となく作業していいて見えていなかった項目も理解できるようになります。油の種類や油圧、空圧の動作、部品の劣化、原因や対策の考え方など、安全面や品質面でも考えるようになるので一つ踏み込んだ作業ができるようになるでしょう。
現場で即戦力となりやすい
工場勤務は期間工や派遣社員が働いているように、未経験者でも気兼ねなく作業できるものです。ただ、それはあくまでも現場や検査などの生産作業や補助業務であって、設備の段取りや調整、メンテナンスといった専門的な仕事は正規社員の中でもしっかりと教育を受けた人が行います。
資格を取得した人はその業種において一般知識を持っていますので、すぐに作業を覚えられるメリットがあるほか、資格がないと作業できないような職種だと即戦力として期待されやすくなります。
転職に有利
工場系で役立つ資格を取得していると、転職時には大きなアピールポイントとなります。工場によっては資格がなくてもメインで作業している人もいますが、転職先ではどのような人材か先方は分かりません。
一定の判断材料になるのが有資格者となります。最終選考に残った人の中で、経歴や面接の印象が同等の場合、資格がない人は不利になりがちです。
勉強意欲があるかないかで判断されますので、資格をたくさん持っている人は勉強熱心で向上心があると高評価をもらいやすくなるでしょう。
年収やキャリアアップに影響
資格を取得していると有利といえますが、さらにキャリアアップにも影響します。工場によっては昇給や昇格の判断材料に資格の保有を条件としている場合があります。
日本の企業はまだまだ年功序列が多いので、だれでも勤続していれば一定の昇給までたどり着けるものです。ただ、ある一定のランクまでくると資格がないと上がれないようになっている工場は多く見られます。
これは社内資格(基準)の場合もありますし、職種に見合った国家資格の保有が絶対条件という企業もあります。このような場合だと、ある程度まで昇給してしまえば、資格を取得しない限り上に上がれないようになってしまいます。
そのため、資格を取得していると年収アップも期待できるほか、昇格して出世を狙うことも可能といえるでしょう。
未資格者でも会社が資格取得の奨励金を出すことがある
基本的に工場の現場作業は未資格者でも十分働けます。難しい作業ばかりになってしまうと、徹底した教育が必要ですし、担当者が急病になれば生産が止まってしまいます。そこで、普段の生産活動自体は未経験者で回し、保守点検やメンテナンスを有資格者で行うパターンが見られがちです。
そこで未経験者で入社しても、実務経験を積んで国家資格に挑戦するようにすれば会社から奨励金が出ることがあります。
一般的に取得する資格は3種類
製造業で活躍できる資格は多々ありますが、その資格とは大きく分けて3種類存在しています。それは「国家資格」「民間資格」「公的資格」の3種類です。
・国家資格
最も重要な資格といえば国家資格です。国の法律で規定されており、専門性もあって難易度は高くて信頼できる資格といえます。
勉強が必要になりますが、職種が同じならどの企業でも通用するので、一つ取得しているだけでも信頼感が異なります。
製造業での有名な国家資格といえば、危険物取扱者や衛生管理者、自動車整備士が代表的といえるでしょう。
・民間資格
民間資格は民間の団体や企業が独自に設けた基準で認定している資格です。国家資格のイメージに近い専門資格もあり、難易度もまばらですが、取得していて損にはなりません。
・公的資格
国務大臣や省庁が認定しているのが公的資格です。国家資格に次いで信頼性の高い資格ともいえます。
メーカーでおすすめの資格
メーカーに勤務する場合におすすめの資格を種類別にみていきましょう。
どの工場でも活躍できる資格
製造業では職種に関わらず、どの工場でも活躍できる資格があります。
フォークリフト運転技能講習
1トン以上のフォークリフトを運転するには、フォークリフト運転技能講習を修了する必要があります。工場には必ず搬入と搬出があり、トラックから荷物を積み下ろして倉庫や現場へ運ぶ作業があるほか、トラックへ積んで出荷する作業があります。
この搬入と搬出にはフォークリフトが必須です。ほとんどの工場でフォークリフトが使用されていますので、フォークリフトの運転資格は重要度が高いといえます。
また、最大荷重1トン未満のフォークリフトの場合、特別教育を受講すれば取得可能です。フォークリフトの資格は重要性も高くて物流には欠かせないものですが、難易度は高くありません。比較的だれでも取得可能ですので、どの工場でも重宝される資格といえます。
危険物取扱者
一般の知名度も高いのが危険物取扱者です。ガソリンスタンドの立札でよく見かける人もいるでしょう。消防法で定められた危険物を取り扱う際には必要です。
しかも、一般的に身近な存在のガソリンや灯油のほか、薬品類も危険物扱いとなります。化学薬品を扱う工場は多いので、危険物取扱者の需要は高いものです。しかも、転職時には工場以外の職種でも活躍できるので、一度取得していると有利な資格となります。
危険物取扱者には他の資格と違って等級が漢字になり、甲乙丙の3種に分かれているのが特徴です。
難易度の高い甲種の資格を取得していれば、多くの工場やプラントでも活躍できるでしょう。
玉掛け技能講習
工場の現場ではクレーン作業も行います。簡単なクレーンの場合は1トン未満の荷重が多いものですが、1トンを超えるクレーンを扱う場合、玉掛け資格が必要となります。
バランスを考えて吊り上げるので、安全面で非常に重要な資格です。年齢が18歳以上なら取得可能なので、メーカー勤務を目指すなら早めに取得を考えておくようにしましょう。
衛生管理者
職場の衛生管理を行う国家資格です。一種と二種に分かれており、50名を超える事業所は衛生管理者を1人以上配置することが義務付けられています。そのため、転職時にも有利な資格となるでしょう。
特に製造業は健康管理に気を遣う仕事といえますので、衛生管理者の需要は大きいといえます。
エネルギー管理士
電気や熱などのエネルギーの使用量を管理するのが国家資格のエネルギー管理士です。大きな工場ではエネルギー管理の選任者を選定しなければなりませんが、これにはエネルギー管理士しか就くことができません。
ボイラー技士
ボイラーの運転や管理を行うのがボイラー技士です。工場だけでなく、ホテルや病院といった製造業以外でも活躍できます。
電気工事士
電気工事が行える資格で、工場には必須の国家資格です。電気関連の資格は重宝されますので、どの工場でも需要がある資格といえるでしょう。第一種電気工事士になると大規模施設の工事も可能になります。
現場ではちょっとした電気工事が必要となることが多く、電気工事に関するスキルを持っている人は現場にとってもありがたいものです。設備のメンテナンスやトラブル対応を任されることも多いでしょう。
CAD利用技術者
設計図や製図を作成するためのシステムがCADです。工場の設備で使われる治工具や各部品の発注にもCADを使用しています。CADは資格がなくても作業可能ですが、転職時に有利となるのがCAD利用技術者の資格です。
機械工場でおすすめの資格
機械工場では専門性の高い資格が活躍できます。それぞれの種類をみていきましょう。
溶接技術者
溶接は製造業には欠かせない作業です。アーク溶接やガス溶接などがあり、自動車工場を始めとして、多くの業種で使用されています。
溶接は金属同士を接合させるので、突発的な部品の修理にも対応できます。特に人気の高いのはアーク溶接で、講習期間も3日と比較的だれでも取得できながら活躍できる場所が多いのでおすすめの資格です。
他にも専門性が高いボイラー溶接士があり、普通ボイラー溶接士と特別ボイラー溶接士の2種類があります。
機械保全技能士
工場の設備保全について知識と技術を備えた国家資格です。多くの製造現場や生産技術が取得している資格といえます。特級から3級まであり、基本は2級の取得を目指すのが通例です。
2級以上は実務経験が必要となります。保全技能士を取得していなくても機械のメンテナンスは可能ですが、さまざまな設備トラブルの症例について学ぶことができます。
機械加工技能士
機械加工技士は金属加工のスキルを証明する国家資格となります。金属加工において一定の品質レベルを保つには必要な資格といえます。特に転職には有利となる資格です。
半導体製品製造技能士
半導体製品製造技能士は、半導体メーカーやデジタル製品の加工に活躍できる国家資格です。半導体製品は需要の大きい分野で、転職時にも有利な資格といえます。
食品関連工場でおすすめの資格
食品関連工場では衛生面や品質管理について必要な資格が見られます。食品工場でキャリアアップに必要な資格をみていきましょう。
食品衛生責任者
食品の製造や加工、調理などを行う工場には必ず食品衛生責任者が配置しなければなりません。この資格では食品衛生の管理を実施しています。
食品衛生管理者
食品衛生責任者と似たようなイメージになりますが、一定の食品や添加物を加工・製造する場合には食品衛生管理者を配置する必要があります。国家資格で食品衛生責任者よりも上位の資格といえます。
QC検定(品質管理検定)
どの製造業にもいえますが、品質面の管理は非常に重要です。食品工場のような消費者にダイレクトにつながる工場の場合、品質が劣化するとすぐにクレームにつながります。
QC検定は品質管理検定ともいい、品質管理の知識を有する資格となります。QC検定はどの業種でも重宝される資格ですので、2級以上を取得しておけば転職でも有利となるでしょう。
管理栄養士
食品メーカーでは重宝される資格で、管理栄養士は食品の栄養素の分析や衛生面のチェックを行い、新商品開発にも従事できる汎用性の高い資格です。
現場以外でも活躍できる便利な資格
メーカーは現場以外の仕事もたくさんあります。そこで現場以外でも活躍できて取得していると便利な資格をみていきましょう。
TOEIC(650点以上)
知名度の高いTOEICは英語のコミュニケーションとビジネス能力を検定しています。メーカーは国内だけでなく、海外企業とのやり取りも多いもので、英語力が必須の職種も多く見られます。
平均が600点程度となるので、それ以上の点数を取得していたらアピールしておくと転職やキャリアアップにも役立ちます。持っていて損は絶対しない定番の資格といえます。
中小企業診断士
経営コンサルタントして非常に価値が高い資格です。企業の診断や経営の助言を行い、マーケティング全般のスキルも有しています。管理職へのキャリアアップにもつながる資格で取得しているだけで一目置かれる存在になります。
簿記検定
公的資格で国家資格に匹敵するほど知名度の高い資格です。経営活動を管理できるので会計や財務に関する知識を有している資格です。商業簿記と工業簿記があり、製造業では工業簿記を取得していると転職にも有利です。製造業問わず、どの業界の職種でも通用する資格といえるでしょう。
MOS
MOSとは「Microsoft Office Specialist」の略で、Microsoft Officeのスキルの証明になります。民間資格ですが、取得を奨励している企業も多く、転職でも大いにアピールできる資格です。どの企業でもワードやエクセルは使用しているものなので、このスキルを有しているのは有利といえます。
まとめ
メーカーで有利となる資格はさまざまで、職種によっても必要性が異なります。転職時に有利となるのはもちろん、キャリアアップにもつながりますので、興味が沸いた人はここで紹介した資格の取得を目指してみてはいかがでしょうか。