自動車や建築でよく耳にする「板金」の仕事ですが、モノづくりの現場にも欠かせない職種となっています。板金の仕事に転職を考えている人の場合、どのような仕事内容なのか今一つピンとこないという人もいるでしょう。自動車の板金修理が一般的なイメージですが、家電製品にも広く使われています。そこで、工場における板金の仕事内容、やりがいなどをここで解説していきます。
板金とは?
板金とは金属を加工して板のように薄い板からさまざまな加工をして最終的な製品に組み付けていきます。車の修理ではドア部の凹みや擦り傷などで板金修理を依頼するケースが多いものです。パーツを交換することなく、凹みを引っ張りだして修復し、キズも綺麗に取り除いて平に仕上げていきます。
家電製品のボディも板金で仕上げていますが、外を走る自動車以外でなかなかボディの傷を板金修理にだすことはないでしょう。たとえば冷蔵庫や電子レンジの扉は自動車と同じく軽量化のために薄い鋼板が使用されています。凹みやひっかき傷があっても大して気にしないものです。
それだけに車に普段から乗らない人ほど板金の仕事がイメージしづらいといえます。板金の仕事は仕上がりも綺麗にするため、一定のスキルが必要となります。一見すると、未経験者には厳しい職種に感じますが、実際にはほとんどの人が未経験から従事していますので安心して大丈夫です。
板金の仕事内容
板金の仕事内容を工程や加工方法についてみていきます。
板金の工程と加工方法
工場の仕事内容や規模によって異なりますが、一般的に板金の工程は下記になります。
図面展開・設計プログラミング
顧客の要望に基づいて図面を設計します。図面はこの後の工程にとって非常に重要です。専ら板金で加工する製品は図面通りに仕上げていきますので、ここでは寸法や角度、粗さなど、完成品に必要なデータからCADなどの図面作成ソフトを使います。
この図面から工作機械用のプログラミングを作成し、板金加工に反映していきます。図面は自工場で作成することもあれば、取引先企業によってはあらかじめ図面を用意している場合もあります。
切断加工
まずは作成されたデータから、本体を展開して切断します。切断加工はハサミと同じ要領で上下の刃で材料を切断するシャーリング加工や、断面をレーザービームで溶かしながら切断するレーザー加工があります。
また、バンドソーカットやパンチプレス加工、ワイヤーカット加工など、材質や形状によって切断する加工方法が異なります。
バリ取り
切断面には小さな突起ができているもので、この部分を綺麗に除去するのがバリ取りです。バリ取りをしないと切断面の突起が邪魔になって精度に影響することもあれば、以降の工程でバリの部分に手が触れてケガをする恐れもあります。
工程を担当した本人だけでなく、エンドユーザーの顧客がケガをするようなことがあれば大問題ですので、必ずバリ取りは行わなければいけません。バリ取りは手作業で行うヤスリやベルトサンダー、バリ取り機などで行います。
曲げ加工
板金加工では図面に沿って金属板の曲げ加工が必要になります。一般的にイメージしやすいのが二つ折にするL字曲げです。板金の工程において重要性の高い加工でもあり、L字曲げを繰り返すZ曲げや対面を折るコの字曲げがあります。
また、L字のように直角に曲げずにカーブのように曲線を描く曲げR加工もあります。最適なRを計算しないといけません。多くの機械工場では自分たちで材料を切断してバリ取りまではするものの、この曲げ加工やRにするのが難しくて板金工場に依頼することがみられます。曲げ加工は失敗すると割れの原因につながりますから、板金の工程においても花形といえる加工方法でしょう。使用する金型は100種類以上に及びます。
溶接加工
曲げ加工で作った製品を接着します。溶接は板金と板金を接着する場合もあれば、他の材料と接着する場合があります。溶接加工は熱や圧力を加えて接合し、さまざまな製品を作り上げることが可能です。
材質や接合部位によっては溶着が難しい場合もあり、溶接後の強度にも影響します。溶接加工には主に「融接」「圧接」「ろう接」があります。
「融接」
・アーク溶接…金属の材料と溶接棒の間にアーク(放電によって生じる火花)を発生させて溶接します。高い電圧をかけるので火花が激しく、一般的な溶接のイメージはこのアーク溶接といえるでしょう。
・レーザー溶接…レーザーで金属を溶かしながら溶接していきます。レーザーは微小な光線を照射しますので、精密品などの製品にも使用できます。ただ、専用の室内が必要で機械も高額になりがちです。
・ガス溶接…可燃性ガスを利用して発生する熱から金属部位を接合します。ガス溶接はアーク溶接よりも強い光ではないので、溶着したい部分を確認しやすく温度調整もやりやすいのが特徴的です。
「圧接」
・スポット溶接…圧接は接合部に電流を流して溶接します。スポット溶接は薄い板向けですが、点状で材料同士を接着し、大幅に時間を短縮して溶接可能です。
「ろう接」
・ろう付け…融点が450℃を超える硬ろう(溶加材)を使用して溶接します。母材を直接溶かさないのが特徴です。
・はんだ付け…中学校の授業でも習って覚えている人も多いのがはんだ付けです。これも立派な溶接で、融点は450℃以下となるのでろう接よりも強度が劣ります。
仕上げ加工・表面処理(塗装)
溶接加工が完了したら、仕上げ加工で溶接部の焦げ跡や傷を除去していきます。製品表面上にあるバリも含めてサンドペーパーなどを用いて研磨し、綺麗に洗浄します。ここまでの工程で付いた細かい傷などもチェックしながら、完成品に近づけていく工程です。
防錆など表面処理を行いながら、塗装もしていきます。顧客には材料のままで塗装を必要としない場合もあります。また、ここまでで図面上は完成する製品もありますが、最終的に組み立てが必要ならビス止めを行います。
検査・出荷
完成した製品の最終チェックに入ります。この検査は板金加工をしてきた作業者とは異なる人員で行います。職人さんが加工していたとしても、顧客へ出荷する際にはクレームとならないよう、先入観を捨てて検査しなくてはなりません。
図面通りに寸法や粗さが規格の公差に収まっているのか確認し、外観もキズやバリの除去ができているか工程ごとの確認の他に、全体を改めて最終確認してから出荷されます。
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工場板金のやりがい
板金はモノづくりの現場において、さまざまな分野で活躍している職種です。自動車工場だけでなく、部品工場や精密工場などでも大小多くの部品や治具を扱っており、修理や交換、新商品などで使用する製品に板金の加工方法は必要不可欠といえます。
板金のやりがいはそんなモノづくりを支えている自負もさることながら、技術が身に付くので、スキルアップになりますし、さまざまな工場でも転職する際に強い実績となるでしょう。
ボディの凹みが激しい場合、綺麗に仕上げて直すことができれば達成感を味わえます。工場勤務の一作業者の場合は直接顧客と話をする機会はあまりないですが、愛車に付いた傷や凹みが綺麗に直って感激しない人はいないものです。人のために役立つ仕事をしている実感も堪能できるのはやりがいある仕事といえるでしょう。
また、板金の需要はかなり高いので、仕事に困ることがありません。工場だけでなく、建築など幅広く活躍できるステージがあるのはやりがいある仕事といえます。
板金の資格
工場で板金の仕事をする際に取得しておくといい資格は工場板金技能士です。
工場板金技能士
工場板金技能士は国家資格で特級から3級まであります。機械板金作業や曲げ板金作業、打出し板金作業、数値制御タレットパンチプレス板金作業などに分かれています。
実際に製品を制作する作業をしなければならず、資格取得には現場作業の実務経験で対策するのが必須です。まずは、3級から取得して一人で加工に携われるようになれば2級を受講し、管理監督者の特級に挑戦するのが道筋といえます。
建築板金技能士
板金技能士にはもう一つ建築板金技能士があります。こちらも国家資格で内外装板金作業とダクト板金作業に分かれています。それぞれ1級と2級があり、内外装板金作業には3級も用意されています。
板金技能士という呼称はどちらかというと工場板金技能士の方を指している人が多いでしょう。
溶接などの特別教育
板金には溶接が欠かせないものですが、主要のアーク溶接は特別教育で取得可能です。国家資格ではありませんので、特別教育を3日間受講するだけですから、比較的容易といえます。ただ、費用は1万円以上かかりますので、転職の際は入社後に会社から支給されるか確認するようにしましょう。
ガス溶接も同様に技能講習ですので、受講を修了すれば取得可能です。ただ、ボイラー溶接士などは国家資格なので混同しないように気を付けておきましょう。
板金に向いている人
板金の仕事に向いている人を紹介していきます。
集中力がある
どのような仕事にもいえますが、板金も集中力が必要な仕事といえます。溶接や傷の除去など細かい作業はもちろんのこと、集中力を欠くと大ケガをする可能性がありますので、自分の作業に集中して取り組める人には向いています。
体力のある人
板金は基本的に立ち仕事です。溶接や塗装では厚い作業着を着用し、現場が暑い環境だと体力をかなり消耗してしまいます。重量物を扱うことも多いので、体力がある人には向いている仕事といえるでしょう。
また、塗装の臭いなどに慣れていない人にも厳しいといえますが、慣れもあるので個人差が生じます。
コツコツ作業が得意な人
地道な作業が多いので、コツコツと作業するのが好きな人には向いています。特に最初のころは工程ごとにやり直しが多くなることもあるので、地道に作業を続けられる人でないと厳しいかもしれません。
まとめ
板金は多くの工程を挟みながら板状の金属を製品の形に仕上げていきます。切断や曲げ加工の他に、溶接や塗装も行うので板金の仕事はスキルアップにもつながります。やりがいのある仕事でもあり、需要も見込めるので板金に興味のある人は一度参考にしてみてはいかがでしょうか。