日本の技術を支えてきたモノづくり。中でも、世界をリードする突出した技術を保有するのは中小企業です。製造業における中小企業の割合は、実に全体の90%以上にも上ります。そのような中で、多くの付加価値を創出する金属加工業で行われるプレス加工は、高品質商品の大量生産に欠かせないものといえるでしょう。
金属部品メーカーや自動車メーカー、専門工場など、数々の業種と関係するプレス加工。これから就職又は転職を考える方たちのために、プレス加工の仕事内容や資格、やりがいや向いている人について解説していきます。
プレス加工とは
プレス加工とは、金属を押して曲げる・切る・形成する加工方法で、それぞれ「曲げ加工」「せん断加工」「絞り加工」「張り出し加工」と呼ばれています。作業者はプレス機械を運転操作することが主な作業です。
プレス加工の特徴として、金属屑や切断片が発生しないというメリットが挙げられます。原料素材に圧力を掛けて加工するという、いわば単純な機構によって作業速度も早く、素材ロスが無い点と相まって非常に生産性が高い加工方法といえます。
機械式と油圧式
プレスに用いる機械は様々ですが、大別すると機械式と油圧式に分類できます。
機械式とは、モーターの回転運動を直線運動に変換してプレスする方式です。機械式は作業効率が高く大量生産に向いている方式で、メンテナンスも比較的容易です。
デメリットはプレス機のスライドストローク調節幅に限界があり、加圧力の調整が出来ない点が挙げられます。
油圧式とはオイルをポンプ等で圧縮し、その圧力で金属のプレス加工を行う方式です。油圧式は生産性が高くない代わりに機器調整や圧力保持がやり易く、かつ最大圧力が機械式に比べて高いという利点があります。機械式では難しい素材加工をできるのが特徴といえるでしょう。
プレス加工の種類
プレス加工はいくつかの種類に分類されます。前述した曲げ加工、せん断加工、絞り加工、張り出し加工がそれにあたります。それぞれの特徴を見ていきます。
・曲げ加工
曲げ加工はプレスの工程のうち、平面状の金属を立体的に加工する最も基本とされる加工です。更に曲げ加工の中でもいくつかバリエーションが有り、「V曲げ」「U曲げ」「Z曲げ」「O曲げ」などその用途・形状に合わせた曲げ加工技術が必要になります。
・せん断加工
せん断加工は、平面素材を切り出す技術で、切断・分割・打ち抜きやトリミングなど多彩な切り出し方法を指します。いわばプレス加工のスタートがせん断で、後工程に曲げや絞りが来るイメージです。
・絞り加工
絞り加工は平面素材を押し込む事で器状に成形する方法で、溶接とは異なりシームレスで複雑な部品を作ることができます。調理器具のボウルやステンレスシンクなども絞り加工で成形されています。特徴としては加工中の素材が非常に割れやすく、取扱いに難しい方法ですが、成形物の自由度が高いメリットがあります。
・張り出し加工
張り出し加工は工場見学系のテレビ番組で紹介されている、複雑な凹凸のある板状の製品パーツを作成する方法です。例えば自動車部品の製造には張り出し成形がよく用いられます。特徴として絞り加工と似ていますが、張り出し加工では凹凸部の肉厚は薄くなり、絞り加工では平面部と凹凸部が均一の肉厚になります。
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プレス加工の仕事内容
プレス加工の仕事内容はどのようなものなのでしょうか。基本的にはプレス工場での機械操作と仕上げ工程の作業になります。作業手順書に従い平面素材を金型にセットし、プレス加工機械を操作します。プレス工程後は仕上げ工程での磨きと呼ばれる研磨作業や、場合によってはメッキ処理を施します。
金型にワークをセットしてプレスをかけますが、このワークセットが手動の場合は作業者が担当します。大きな製品を扱う場合は力も必要です。オペレーターとしての作業は難しいものではなく、未経験でもすぐに覚えられるのが特徴的です。
機械の段取りをする人には熟練の腕も必要となり、新しい製品を作るときには鍛造の技術と合わせて緻密な作業となります。
プレス加工のやりがい
プレス加工のやりがいとは、どのような所にあるでしょうか。
まず、高精度で高品質を追及する日本のプレス加工技術、そのトップ技術を習得することができます。プレスと一言で言っても多種多様な加工方法があり、それぞれが社会をけん引する製品の基となる部品を作っています。
プレス加工で作られるモノは日常生活に欠かせないものが多くあり、自分の仕事が日本のモノづくりや経済を支える基盤産業に携わる面白さが、やりがいといえるでしょう。
また、プレス加工のオペレーターは単調な作業といえますが、専門的な手作業の場合もあり、職人の仕事を覚えることが可能です。自身のスキルアップにもつながるでしょう。
プレス加工の資格
プレス加工の資格には「金属プレス加工技能士」と「工場板金技能士」、「プレス機械作業主任者」があります。
金属プレス加工技能士は国家資格であり、技能検定に合格した者は技能士と認定されます。1級と2級があり、それぞれ技能試験及び筆記試験があります。
工場板金技能士も同様に国家資格であり、技能検定に合格した者は技能士と認定されます。特級から3級まであり、技能試験と筆記試験をパスすると取得できます。
大きな工場になると、「プレス機械作業主任者」も必要になります。プレス機械作業主任者は、5台以上のプレス機を有する企業に選任が義務付けられている有資格責任者です。技能講習を修了した者が取得できる国家資格になります。安全を管理する立場の為、現場責任者に選任されるためには半ば必須の資格といえます。
プレス加工にだけ関係する訳ではありませんが、国家資格の公害防止管理者のうち、「騒音・振動関係」も推奨資格です。工場における騒音・振動は周辺環境や住民への影響だけでなく、働く労働者にも深刻な問題です。騒音・振動問題は事業者が対応すべき義務となっていますので、事業規模によって有資格者を選任する必要があります。こちらについても取得していると優位に働きますので検討してみるのもおすすめです。
転職する際に武器となる資格ですが、国家資格の場合には実務経験が必要となる場合がほとんどですので、企業側が資格取得を奨励しているケースがあります。製造業のプレス加工は専門的な職人の仕事という一般的なイメージが付き物です。
しかしながら、未経験者募集の場合には転職時にプレス加工の資格がなくても大丈夫ですので、安心して転職活動に臨めます。
プレス加工に向いている人
プレス加工は機械が主になる作業なので、基本的に単調作業になります。しかし機械の操作や各種パラメータ―の微調整などは人が行う必要があります。作業的にマニュアルよりも「経験と勘」をベースとしている工場もあるほどです。
また、プレス加工には危険が伴います。危険作業に対して敏感である人や、作業中に集中を維持出来る人がプレス加工業に向いているといえます。
プレス加工に向いている人の特徴を挙げると、以下のようになります。
- 単調な作業が好きである人
- 現場を重視し自らの技術・技能を使う仕事をしたいと考える人
- 比較的長時間の集中を維持出来る
- 加工機械に興味があり、また整備等が得意である人
- 日本のモノづくりに携わりたいと思う人
これらに当てはまる人はプレス加工に向いているといえるでしょう。
プレス加工の注意点
製造業の現場では危険が多く潜んでいます。中でもプレス加工は危険性を有する職業です。 安全面の観点から見ると、減少傾向ではあるものの、2021年では依然として全国で445件の労働災害が発生しているのが現状です。
労働災害が多い
そのうち「はさまれ」・「巻き込まれ」が181件と、実に40%にのぼります。単調作業であることと相まって注意力が散漫になり易いのが要因の一つといえるでしょう。プレス機に挟まれると人体への被害は大きくなってしまいますし、工場で共に働く同僚へも危険が及びかねない作業です。
油圧シリンダーに手を挟まれると基本的に抜け出せません。簡単に骨折するので特段の注意と安全対策が必須な業種であるといえます。
職場が暑いので集中力が散漫
衛生面から見た場合、プレス加工作業を行う工場内は機械の発熱の影響で建物内が暑くなりやすく、工場扇や空調が整備されていない職場では熱中症のリスクも高まります。さらに、暑さによって集中力の低下を招き、それが事故の要因にもつながる恐れがあるでしょう。
機械がメインの単調作業であるが故、気を抜いてしまうと労働災害に直結してしまうプレス加工ですが、工場では安全管理にかなりのコストを支払って取り組みがされています。
また作業者側も定められたルールから逸脱せず、注意して作業すればケガの危険性を減らせますので、基本的には手順を守ればそれほど恐れず安全に作業できる仕事といえるでしょう。
まとめ
プレス加工についてその内容と資格、向いている資質についてまとめました。プレス加工にもさまざまな種類があり、そのどれもが日本のモノづくりを支えています。プレス加工にはやりがいや、資格を積極的に取得していくことで得られるメリットがあります。
プレス加工は確かに危険の伴う業種であって、普段の生活から作業内容を想像するのが難しい仕事であるのは事実です。しかし、自身がプレス加工に対して向いているのか不向きなのかは、ある程度実務経験をしてみないと判らない面もありますので、興味があれば転職を検討してみてはいかがでしょうか。