「工場で働く」と聞くと金属の切断音や機械の稼働音・換気扇の音など「うるさい」や「騒音が凄そう」などのイメージがあり、聴力やストレスへの影響が心配になるものです。体調面はもちろん、作業に没頭できずに品質面にも悪影響が出てしまう恐れがあります。そこで工場での騒音対策事例や、工場内で働いている作業者の方々が実際に行っている騒音対策について解説します。
騒音の基準・レベルについて
まず「騒音」の基準やレベルについてみていきます。
騒音の基準(環境基準)
環境省では「騒音に係る環境基準」について、療養施設や福祉施設など静かな環境が求められる地域では昼間は「50デシベル以上」、夜は「40デシベル以上」の音を出すと騒音とみなします。
一般的な住宅地では昼間は「55デシベル以上」夜は「45デシベル」以上の音を出すと騒音で、住宅地の他に商業施設や工場などもある地域では昼は「60デシベル以上」夜は「50デシベル以上」が騒音の基準となっています。
参考:
騒音に係る環境基準について | 環境省
https://www.env.go.jp/kijun/oto1-1.html
騒音のレベル(目安)
騒音のレベル(目安)としては、日常生活で「静かだ」と感じるのは45デシベル以下であり、望ましい音のレベルは40〜60デシベルであるといわれています。そして、60〜70デシベル「うるさい」とされ、蝉の鳴き声(近い距離)や普通の会話、掃除機、騒々しい街頭がこれにあたります。
また80〜140デシベルが「極めてうるさい」とされ、犬の鳴き声(近い距離)、電車が通る時のガード下、ヘリコプターの近く、ジェットエンジンの近くなどがこれに含まれます。
実際に工場内の騒音では85デシベル以下を目指すのが望まれており、それでも一般的には十分「うるさい」レベルにあると推測されます。
工場での騒音実態
では、実際に工場で起きる騒音はどのような実態なのでしょうか。
作業音がうるさい工場
「工場」といえども、扱う製品や担当する部署(ポジション)によって、工場での音の程度や騒音を感じる頻度が異なります。単純に製造業の工場だからといって「作業音がうるさい」「作業音が静か」などとは言い切れません。
作業として、金属塊に圧力を加えて目的の形状に成形するプレス機なども作業時に大きな音が出ることもあります。
機械自体がうるさい
工場のメインといえば機械です。機械も静音性が求められていますが、それはあくまでも近年に設計されたもので、平成の半ばに作られた機械をメンテナンスしながら継続使用している工場も少なくありません。
機械にも圧力のかかりやすい油圧式は動作音が大きいですし、クーラントタンクに設置されているポンプは、動作音がタンク内の配管と反響してより大きな振動音を生じさせることもあります。これが何十台にも及ぶラインの場合、耳がマヒするほどの大きな騒音となるでしょう。
また金属加工と比べると大きな音を出すイメージが少ない木材加工では、機械によって大きな音が出ます。現在は低騒音型の機械を採用している工場も沢山ありますが、全ての工場が備えているわけではございません。中でも騒音苦情を引き起こすことが多いとされるのが、木工所や材木店で一般的に使われている帯のこ盤、丸のこ盤、かんな盤です。これらの機械は金属加工器械に比べて、高回転で作動することによって高周波域の騒音(「キーン」や「ピー」の耳鳴りのような高い音)を発生します。
作業音が静かな工場もある
金属加工や木材加工の工場では、実際に「騒音」と言われる作業が発生しますが、一方で工場であるにもかかわらず「騒音」は全くと言っていいほど発生しないところもあります。
比較的「作業音が気にならない」とされる精密機器(電子部品組み立て)などが行われる職場では、大きな機械を動かすことや、大きな部品の持ち運びや加工をすることがほとんどありません。そのため騒音が出ることもほとんどありません。
精密工場や半導体、医療機器を製造している工場では、扱っている機械自体に大きな音が出ないようになっています。
また精密機械工場と同じく食品加工の工場も比較的作業音は静かといえます。食品加工の作業は食材のカットや袋詰め、検品、梱包などが中心となります。
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工場の音がうるさいと懸念される不安点
工場での騒音で懸念される点は主に二つあり、健康面と品質面になります。
健康被害に影響する
工場内での騒音は直接的に働く現場作業者の健康被害に影響してしまいます。工場では年1回の健康診断で聴力検査が実施されますが、聞こえにくいと感じる人もいることでしょう。
これは普段の工場の騒音に慣れてしまい、耳がマヒしている状態に陥っているからです。耳栓をしていると「話し声が聞こえにくい」「機械の振動や異音が分かりづらい」という理由で外してしまう場合があります。
音を聞いて判断するような職場の雰囲気だと、騒音に慣れてしまうケースがあるでしょう。
ただ、難聴になると聞こえにくいだけでなく、めまいや頭痛も引き起こして体調面が悪化することも考えられるので危険です。
集中力が低下して品質面に悪影響
工場では安全が最優先ですが、同じくらい大切なのが品質の確保です。作業者が騒音で集中しづらい職場の場合、品質にも悪影響が出てしまいます。うるさい音にイライラしてうっかりミスをしてしまう可能性もあり、後工程もミスに気付かずに品質不具合品を流出する恐れがあります。
品質面の悪化は企業の信用を落としかねない重大クレームにつながりますので、たかだか騒音と侮ってはいけません。
工場が行う3つの騒音対策
工場が行っている騒音対策にはどのようなものがあるのでしょうか。工場が行なっている3つの騒音対策について解説していきます。
防音制振処理をする
音の発生源となっている金属加工機械などの機器に対して、音が外に漏れないようしています。例えば、防音ボックスの設置や振動を抑える制振処理などがこれにあたります。また、機械の振動が建物を全体的に揺らしてしまうほど大きい場合には、床の基礎部分に防振ゴムを施工することや、機器の下に防振マットを敷いて振動を軽減して、機器の振動による音の発生を防いでいます。
工場の天井や壁などに遮音・吸音対策をする
機器への防振対策をしたものの、工場自体が簡易的な建物であり、屋根や壁の遮音性が低く金属加工時に発生する音を防げない場合もあります。そのような場合には、防音性を高めるために天井や外壁、間仕切壁、外部に通じる窓やダクトなどの開口部に対し、重点的な遮音・吸音対策が行われています。
例えば、全ての天井や壁に遮音パネルを設置したり、グラスウールやウレタンスポンジなどの吸音材を貼り付けたりしています。また、出入り口を扉とビニールカーテンの二重構造にして騒音を抑え、消音チャンバー・消音ダクトなどの消音装置を導入する対策を講じている工場もあります。
作業の時間帯や窓の開閉ルールを設定する
防音製品の導入や防音設備を整えることも大切ですが、工場の稼働する時間帯や稼働のルール自体を騒音対策のために設定している場合もあります。
例えば、閑静な住宅街や老人ホームなどの療養福祉施設が近隣にある地域には、大きな音が出る作業は行わないように配慮し、深夜や早朝などの一般的に静かにしないといけない時間帯には作業を行わないようにしています。
予め大きな音の出る作業は日中にスケジューリングされていて、その際には窓を閉めて音漏れを防ぐようにするなどのルールを徹底し騒音対策を行なっています。
作業者が行える対策
騒音を一番近くで感じるのは工場内で働く作業者です。作業者の方々が独自に行える騒音対策をみていきましょう。
耳栓やヘッドホン
最も一般的な対策は耳栓やヘッドホンなどのカバーです。騒音がある程度仕方ない工場の場合、会社から支給される耳栓を装着して騒音から身も守ります。多くの工場では耳栓やヘッドホンを支給していますが、自分の耳に合うサイズや形状ではない場合、市販の耳栓を購入して対策をする作業者も少なくありません。
また、市販の耳栓を使用する場合、耳栓が落ちて異品混入にならないように、上長の許可をしっかり取ってから装着するようにしましょう。
騒音の発生か所にカバーの設置
機械から発する騒音の場合、防音カバーを設置して音を軽減することができます。自分で作成するのは時間もかかって大変ですので、安全担当や生産技術などと協業して、採寸を図り製作依頼をしていきましょう。
防音カバーができて騒音を軽減できれば改善提案にもなって評価にも反映されます。
職場の異動
どうしても騒音が防げない職場の場合、思い切って異動願いを提出するのも一つの手法です。工場でのうるさい音というのは個人差もあり、作業者によって感じる不快感も異なります。
「忙しいから」と上長が取り合ってくれない場合は、工場や企業の安全担当に連絡して異動を申し出ましょう。大きな工場の場合は労働組合の執行委員が安全担当を兼ねているケースがよく見られますので、相談することをおすすめします。
まとめ
製造業の工場で働く際には、工場内の騒音が非常にうるさいものであると認識しなければなりません。静かな工場もありますが、作業する音や機械の音が騒音となってしまうケースがあり、日常生活のデシベル数の倍近い大きな音が発生しています。
もちろん、担当する部署や生産ラインによって感じる音の量は異なりますが、騒音は健康面や品質面にも関わる重大なものです。自分のできる範囲で騒音対策を実施していくようにしていきましょう。