工場の品質管理に必要な非破壊検査とは? 検出方法やメリット・デメリットを紹介

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工場勤務を目指している人にとって、入社してから必ず指導されるのが品質管理です。現場の生産ライン、生産技術などの技術職、生産管理や事務職などのデスクワークに至るまで、工場にはさまざまな部署があるものですが、品質に関しては必ず一定の教育を受けます。

現場は品質管理も必要で、品質保証ばかりの仕事でもありません。通常の寸法検査や外観検査の工程では見つけられない不具合品の場合、非破壊検査で検出する必要があります。

そこで、品質問題を抽出する非破壊検査について解説していきます。

非破壊検査とは

非破壊検査(Nondestructive Testing, NDT)とは、工場で生産される製品や、前工程の材料、関連部品などの表面や内部の欠陥、割れ、焼けといった品質異常を検出する検査です。

通常の工程検査において、目視では分からないレベルの異常になると、市場に流通してから欠陥が見つかり、自動車や鉄道車両、航空機などの部品に異常が起きると、下手をすれば人命にかかわることもあり得ます。

そこで、製品や材料を壊さずに検出できる検査が非破壊検査となります。全数や抜き取りなど対象ロットを使用可能の状態で検査できますし、信頼性の高い品質管理を維持できるのがメリットです。

どのような非破壊検査があるのかみていきましょう。

放射線検査(X線検査、ガンマ線検査)

放射線検査はX線検査とガンマ線検査があります。どちらも製品や材料内部の欠陥を画像化することができます。鋳物の内部を検査するにも最適です。

・X線検査

病院でのレントゲン検査でお馴染みですので、イメージは付きやすいものでしょう。透過したX線から解析し、照射された対象物の欠陥を判断します。X線検査は鋳物や溶接部の金属だけでなく、プラスチックやセラミックスなども検査できます。

ちなみにレントゲン検査とX線検査は同じ意味合いを指し、正式にはX線で、レントゲンはX線を発明した博士の名前を由来としています。

・ガンマ線検査

ガンマ線はX線よりも高エネルギーを放出し、厚みのある対象物に用いられます。内部の空洞も検出可能です。

超音波検査

超音波検査は高周波の音波を使用し、製品や材料内部の不連続性や内部欠陥を検出しています。

超音波検査には「パルスエコー法」と「TOFD法」があり、前者はパルス波から反射されたエコーを受診して解析します。後者は回析波から製品の高精度な欠陥を判定するのに向いています。

磁粉探傷検査

磁粉探傷検査は磁化状態にされた製品に磁粉を散布して、キズや割れが生じると欠陥した部位に磁粉が集まるので目視判断がしやすくなります。

判定にはブラックライトを使って視覚判断しやすいように段取りします。磁粉探傷検査には乾いた磁粉を使って検査する「乾式磁粉法」と、磁粉を撹拌した液体を使って検査する「湿式磁粉法」があり、後者のほうが高精度の欠陥を判断しやすいものです。

浸透探傷検査

浸透探傷検査は表面にある小さな亀裂などの欠陥を、液体浸透剤を用いて検出する方法です。浸透探傷検査には「蛍光浸透検査」と「着色浸透検査」があります。前者は浸透液を塗布してUVライトで発光すると欠陥が検出できます。後者は着色剤を含んだ液材を用いて欠陥部分がると赤く色分けで判定できる方法です。

渦流探傷検査

渦流探傷検査は電磁コイルを使用して電流を流しながら磁場の変化を見る検査方法です。直接コイルに触れなくてもいいので、製品はそのまま使用できるメリットがあります。

コイルの周りに交番磁場が発生し、電流が流れることで表面に欠陥があると過電流が変化します。

ナイタルエッチング

金属組織の変化を調べる検査方法です。硝酸や塩酸などの混合溶液を使用して、腐食させて化学的に処理します。各工程で金属組織が変化する異常があると、ナイタル混合液に浸透させて色の変化を観察します。

研削工程には最適な非破壊検査です。

その他の非破壊

・検査赤外線サーモグラフィー

赤外線カメラを使って対象物の表面温度分布から欠陥や異常状態を検出します。電気機器や配管、断熱材の検査に適しています。

・音響放射検査

製品にクラックがあると音響エネルギーから欠陥を発見できる検査方法です。

・レーザー干渉計検査

レーザー光を照射して製品や材料の表面に生じる変位や振動を検出します。

非破壊検査が使われる分野

上記で説明した非破壊検査はどのような分野で活用されているのかみていきましょう。

・製造業

自動車部品工場や関連工場、産機などの機械部品を扱う工場では溶接部や研削、研磨の工程において、工程間の品質管理品に重要な役割を擁します。

非破壊検査がクリアできないと、次工程に進められず、対象ロットが進行停止になることもあります。

鋳物や組立の品質保証に入っている場合もあるものです。

・航空機関連

航空機の部品はすべて精密級の扱いです。大勢の人命に関わるので部品のチェックも全数検査など、シビアといえます。航空機関連では宇宙開発に使用する部品もあり、慎重さが求められます。

特に航空機のエンジン部は、非常に高い品質基準が求められるため、非破壊検査が重要です。超音波検査とX線検査が主に使用され、内部の欠陥や亀裂を検出可能です。

・エネルギー産業

風力発電などのエネルギー産業にも非破壊検査は使用されています。最終完成品のみだけでなく、組み付ける各部品にも非破壊検査の工程があり、石油やガスパイプラインなど、高所・高温・海洋・地下といったさまざまな場所で活用されています。

特に長距離にわたる石油・ガスパイプラインでは、腐食やクラックが重大な問題です。渦流探傷検査や超音波検査で表面から内部の欠陥を検出し、遠隔操作でモニタリングします。

また、原子力発電所の配管検査には非常に厳しい検査が求められ、超音波検査や磁粉探傷検査、放射線検査などが使用されて、わずかなクラックや腐食も許しません。

非破壊検査のメリット・デメリット

工場で行われる非破壊検査では、どのようなメリットとデメリットがあるのかみていきましょう。

非破壊検査を行うメリット

最大のメリットとして、検査対象の製品を破壊することなく、現状の状態を維持したまま検査できることです。

これは今の工程で起きた不具合を即座に調べることができるので、万が一欠陥が見つかったとしても、その場で修理や選別などの対応が可能となります。リアルタイムで対応できますし、すべてを破壊しないと分からないと全数ロットアウトとなって廃棄処分となってしまいます。

欠陥が入ったのがその1個のみなのか、まとまっているのが、それとも材料起因で全数なのかも調べることが容易となります。

高精度で検出可能な点もあり、通常の外観検査では見つからない表面上の欠損や内部の亀裂などが分かるのもメリットといえます。

デメリットもある

非破壊検査は社内規格や資格も要するものばかりであり、高度な技術と専門知識を有する人材が必要です。品質保証部が外部講習で資格を持っている場合があるものの、ロット数が多い場合は人員が多い現場の作業員が検査することも少なくありません。

しかし、一番大事なのは非破壊検査の作業よりも判定基準です。判定がしっかりできないとNG品を流出することになりますし、良品をNGかどうかで迷うと生産性が落ちてしまいます。

こうなると、工場の従業員が非破壊検査で正しい判定ができるように教育・指導しなければなりません。そのためにも品質保証部を含めた指導員による教育で内部資格を持たなければ基準を統一することは難しいといえるでしょう。

非破壊検査を疎かにすると莫大な損失の可能性

基本的にNGが出ないのが理想です。ほとんどが良品判定になるはずなので、非破壊検査を行う担当者の中には、一度もNG判定に出くわしたことのない人もいるでしょう。

そうなるとやりがちなのが全数必要なところを抜き取りにしたり、始業前チェックを怠り、検査液の濃度や明るさ、磁力などを適当にセットするなど、手抜きの検査をしてしまいことです。

万が一にも欠陥を見逃して次工程に流出してしまえば、実際に製品が破損するまで気付かずに放置したままになってしまいます。

これが大勢の人を乗せる鉄道車両、船舶、航空機となれば、大惨事につながる恐れが生じます。自動車も同様に多重事故や死亡事故を起こしてしまいます。

大規模な事故につながると、当然ながら警察や関係省庁の調査が入り、原因判明まで詳しく監査が入るので、自工場のずさんな検査が問題で流出したと分かるとニュースでも大きく取り上げられて企業の信用性を大いに失墜することになるものです。

また、エネルギー関連になると欠陥が生じてしまうと簡単に部品を交換できません。稼働を止めてメンテナンスすることになるので、海外の事業所に納品している場合、海洋の高所にある風力発電や原子力、パイプラインなど、交換するだけで億単位の賠償金が発生するケースもありえます。

逆にいえば、非破壊検査は製品の品質と信頼性を確保するために必要なものであり、自社で生産された製品を保証するためにも重要な役割を果たしています。常に正確な検査方法で臨むようにしましょう。

非破壊検査のさらなる発展

非破壊検査は多岐にわたる技術や手法がありますが、これらは量産していくためにもさらなる発展が必要となっていきます。

非破壊検査では手作業で1個ずつ検査していく方法を採用している工場も多く、生産性が上がらないこともあります。デジタル化を進めて即座にモニタリングで解析を行い、検出確認を目視で行わなずにOKとNGの判定を自動で検出する装置もあります。

非破壊検査をロボットで自動化している機械も導入されており、製品のセットは手作業で行っても被ばく量をゼロにする密閉された装置、画像処理で欠陥部分を自動的に検出することも可能です。

コンベアー上でカメラやビームで複数のパターンを判定し、NG判定されるとオフラインで別管理できる自動化ラインシステムもあります。

もちろん、それだけ高価な投資にもなりますが、人手不足の解消にもつながりますし、連続作業が可能となると効率よい生産体制を構築できるようになります。

検出されたデータをシステムに統合していき、発生原因の解明にも役立ちます。さらに、AIを搭載したシステムにおり、予測モデルの構築も進められ、人によって曖昧な判断とならないように高精度な検査システムが期待されます。

まとめ

非破壊検査は品質管理の点において、非常に重要であり、さまざまな手法を用いて進められています。人の目では監視できない小さな傷や割れといった欠陥を検出し、自動車産業やエネルギー産業など、高度な技術が用いられている分野には必要です。

万が一にも欠陥が入った製品が市場に流出すると、会社の存亡に関わる大事故につながる恐れがあるので、しっかりと検査することが大切といえます。

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