大型の設備がある工場やホテル、病院ではボイラーを設置しているものですが、このボイラーを扱うには国家資格が必要となります。ボイラーには「ボイラー技士」「ボイラー整備士」「ボイラー溶接士」の資格があり、それぞれ特徴が異なります。
そこで、工場におけるボイラー資格と特徴や向いている人を解説していきます。
工場で活躍できるボイラー資格とは
高温を扱うボイラーだけに、安全面からも資格が必要となります。ただ、小型ボイラーや簡易ボイラーには資格が必要ありません。
まずはボイラーの資格をみていきましょう。
ボイラー技士
ボイラーを扱うにはボイラー技士の国家資格が必要です。ボイラー技士は特級・1級・2級があり、作業するだけなら2級を取得すればどのボイラーでも取り扱い可能となります。
ただ、ボイラーを設置している事業所では、ボイラー取扱作業主任者を選定しないとならず、これは等級によってそれぞれ扱えるボイラーが異なります。
ボイラー技士の仕事内容はボイラーの保守点検やメンテナンスを行い、事故を起こすと被害も大きいだけに、事故を未然に防ぐ管理が必要です。
ボイラー技士のそれぞれ3つの資格をみていきます。
・2級ボイラー技士
25立方メートル未満のボイラーに限り、取扱作業主任者になれます。特別な受験資格も不要で、勉強すればだれでも合格することが可能です。
2023年の合格率は54.7%で国家資格としては比較的難易度は高くありません。
・1級ボイラー技士
25立方メートル~500立方メートル未満のボイラー取扱作業主任者になることができます。工場や病院などの大型施設に必要です。2級ボイラー資格や海技士(機関3級以上)など、規定の実務経験も必要となります。
2023年の合格率は49.6%と1級としての難易度は高くないでしょう。
・特級ボイラー技士
どの種類のボイラー施設で作業主任者になることが可能です。1級ボイラー技士の資格(もしくは規定の資格以上)を有し、規定の実務経験が必要となります。
2023年の合格率は21.8%と1級よりも格段に難しくなっています。
工場などの大型設備になると、1級ボイラー技士の資格は必要となるでしょう。ボイラー技士の試験は筆記試験のみで、実技はありません。ボイラーの構造や取扱、燃料、法令などの試験科目から出題されます。
受験準備講習を毎年開催しているので、しっかり勉強すれば1級までの試験は取得可能といえます。
ボイラー整備士
一定以上のボイラーや第一種圧力容器を点検・整備するのに必要な国家資格です。ボイラー技士との違いは実務業務ができるかどうかとなります。ボイラー技士はボイラーを使って実際の作業を行いますが、ボイラー整備士は実務業を行いません。
ボイラー整備士はボイラーの清掃や部品の交換といった整備がメインの仕事となります。
ボイラー整備士には等級が存在せず、だれでも受験可能です。ただ、免許をもらうには実務経験が必要となります。
筆記試験のみで、合格率も60%以上と高めであり、比較的難易度は易しいといえるでしょう。試験科目はボイラーおよび第一種圧力容器の整備・器材・薬品・法令関連が出題されます。
ボイラー溶接士
ボイラー溶接士はボイラーの製造や修理をする際に必要な溶接作業を行います。ボイラーは高温で事故が起きると被害が大きいものですから、ボイラー溶接士には慎重な作業が求められるでしょう。
資格は等級ではなく、「普通ボイラー溶接士」と「特別ボイラー溶接士」の2つが存在しています。
・普通ボイラー溶接士
第一種圧力容器、フランジや管台の溶接を行い、溶接部の厚さが25ミリ以下のボイラー溶接も可能です。
受験資格は1年以上の実務経験が必要で、試験には学科試験と実技試験があります。
試験科目はボイラーの構造や材料、修繕方法、溶接に関連する知識、関連法令などから出題されます。実技は下向き突合せ溶接と立向き突合せ溶接が出題されます。
・特別ボイラー溶接士
すべてのボイラーや第一種圧力容器などの溶接が可能です。特別ボイラー溶接士の資格を取得すれば、ボイラー関連以外の溶接もこなせるようになります。
受験資格は普通ボイラー溶接士の資格取得後、実務経験が1年以上必要です。試験科目は普通ボイラー溶接士と同様で、実技試験は横向き突合せ溶接となります。
合格率は普通よりも特別の方が高くなりますが、これは実務経験を経ていることが挙げられます。
普通ボイラー溶接士…学科68.2%・実技60.2%
特別ボイラー溶接士…学科69.9%・実技87.2%(共に2023年)
工場におけるボイラー資格の必要性
工場におけるボイラー資格は非常に大きな存在といえます。大型の設備を多数抱える工場では、ボイラーによってエネルギーが送り込まれて生産活動を支えています。安全に稼働するためにもボイラー資格は必要不可欠といえるでしょう。
大きな工場では1級以上のボイラー技士の資格が必須です。ボイラー技士やボイラー整備士によって安全にボイラーを稼働させ、管理・点検・整備業務もしっかり行う環境が必要となります。
ボイラーは万が一にも事故が起きてしまうと、甚大な被害を及ぼす恐れがあります。それだけにボイラー溶接士の慎重な作業も重要であり、これらボイラー資格を持つ人たちの役割は工場にとって非常に大きなものといえるでしょう。
ボイラー資格に向いている人の特徴
ボイラー資格に向いている人の特徴をみていきましょう。
コミュニケーション能力が高い
ボイラー技士は実際にボイラー業務を行いますので、専門的な知識はもちろんのこと、現場施設の連携も大事となります。これはボイラー整備士にもいえることで、修理や保守を担当するのに、顧客と密な連絡を取り合う必要があるからです。
円滑な作業のためにも、コミュニケーション能力は必要といえるでしょう。
慎重さがあって細かいところに気付きやすい
ボイラーは高温を扱うだけに、ミスをすると大きな事故となる可能性があります。作業は慎重さが求められますし、ミスを防ぐために細かいところにまで気付きやすい人は向いています。
作業が雑な人はボイラーの資格に向いていません。これは「ボイラー技士」「ボイラー整備士」「ボイラー溶接士」のいずれにもいえるでしょう。いつもと違うというアンテナを常に張り巡らし、小さな変化にも気づける人はボイラー資格に向いています。
体力に自信がある
ボイラーを設置しているのは、大きな施設がほとんどです。工場はもちろん、病院やビル、ホテル、学校といった広範囲に移動をしなければなりません。肉体労働というわけではありませんが、集中力も必要ですし暑い中での作業を強いられることもあって体力を消耗しやすくなります。
体力に自信のある人はボイラー資格に向いているといえるでしょう。
責任感がある
ボイラーは一歩間違えれば重大な事故につながり、ミスをすることが許されない仕事でもあります。強い責任感を持って作業に集中しなければなりません。品質面にも妥協せず、常に新しい技術や法令があれば勉強し、知識や技術を敷き詰めていく人ほどボイラー資格に向いているといえます。
また、地道にコツコツと作業を積み重ねていくのが好きな人にも向いているでしょう。
ボイラー資格の将来性
工場や病院、学校、ホテル、商業施設のような大きい施設ではボイラーが設置されているので、ボイラー資格は工場以外の施設でも活躍できるのが特徴です。ボイラーを設置している施設で働くこともあれば、建設会社やビル管理会社に所属している人もいます。
2級ボイラー技士は未経験でも取得可能ですので、実務経験を積みながら上級へとキャリアアップを図れます。実務作業と保守業務を兼務するために、ボイラー技士とボイラー整備士を両方取得するのもプロのボイラー作業主任者にはメリットが生まれます。
また、工場勤務の人の中には、危険物取扱者・電気工事士といった資格を取得している場合があるでしょう。これらの資格とボイラー資格を合わせ持つことで、ビルメンテナンスなどの仕事にも転職して活躍できます。
まとめ
ここまで工場で活躍できるボイラー資格を紹介してきました。ボイラー資格の仕事はミスの許されない内容となりますので、慎重な作業が求められるものです。
・ボイラー技士
・ボイラー整備士
・ボイラー溶接士
これらの国家資格は工場以外の大きな施設でも活躍できますので、転職活動にも強い味方となるでしょう。